2024年10月29日

成人肺炎診療ガイドライン2024〈75〉ペニシリン系抗菌薬の歴史

ペニシリンはご存じの通り、最初に発見された最も歴史の古い抗菌薬です。最初のそれがペニシリンG(PCG)。これができた頃は、第二次世界大戦があり、多くの戦傷者を救ったといわれています。PCGはグラム陽性球菌、なかでも連鎖球菌などによく効きますので、外傷からの感染症にも効果があったのでしょう。
で、当初ペニシリンはガンガン使われたわけですが、そのうちに問題が出てきます。要するに効かないケースが出てきたのです。もともとグラム陰性桿菌には効きませんし、ペニシリンを分解する酵素ペニシリナーゼを産生する菌にもあまり効きません。表皮にたくさんいる黄色ブドウ球菌もペニシリナーゼを産生する性質を持つようになり、耐性化してきたのです。
普及しだしてからわずか数年以内に、「抗菌薬をたくさん使って耐性獲得される」という、抗菌薬の宿命ともいえる事態を招いていたわけです。そこで人類は、ペニシリンの「改良」に着手します。

構造を変更してペニシリナーゼに分解されにくくする
これの代表がメチシリン。何となく聞き覚えがありますね?そう、メチシリンは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の名前の由来になった薬です。
そもそも黄色ブドウ球菌用として作られたメチシリンですが、メチシリンを使い出してほどなく、メチシリンに耐性を持つように菌の標的部位構造が変化しました。これがMRSAなんですが、たまたまその構造変化の部位が特徴的なために、ほとんどの抗菌薬が効かない菌になってしまったのです。たまたまとはいえ、メチシリンはMRSAを生み出した汚名を着せられ、また副作用の問題もあり、わが国では表舞台から姿を消しています。

構造を変更して、グラム陰性桿菌にも効くようにする
いわゆる広域ペニシリンという範疇に入るペニシリンです。この中にも、緑膿菌に効くやつと効かないやつ、大きく分けて2種類あります。ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)で分解されるので、ペニシリナーゼを産生する菌にはやはり効き目がありません。

ペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害薬を混ぜる
上記の広域ペニシリンにペニシリナーゼ(βラクタマーゼ)阻害薬を混ぜたものです。そのためにペニシリナーゼ産生菌に対するスペクトラムが広がりました。
元の広域ペニシリンに、上記のごとく緑膿菌に効くやつと効かないやつがあるため、こちらも同様に、緑膿菌に効くやつと効かないやつがあります。

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posted by 長尾大志 at 11:30 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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