2010年04月07日

滋賀の呼吸器内科医数は産科並み

マスコミの報道では、小児科医、産科医が少ない、医療崩壊だという。
実は滋賀において、呼吸器内科医はもっと少ないのだが、「内科」にくくられているため、統計上、表には出て来ないのである。呼吸器内科の医療崩壊はずっと深刻である。
全国的にも呼吸器内科は「内科の中の産科」と言われている。

滋賀には呼吸器内科を専門とする開業医の先生はほとんどおられない。

勤務医でも、最近府立大の引き上げなどあり、滋賀県全体で20人前後である。

滋賀に呼吸器内科医が少ないのはなぜか。

理由は明白である。滋賀医大に30年以上呼吸器内科講座がなかったため、呼吸器内科医が養成されなかった。そのため、滋賀の呼吸器科医は、京大、京都府立医大からのわずかな派遣に頼っているのが現状である。そのわずかな派遣さえも、絶たれようとしている。

ちなみに呼吸器内科領域の患者数は, 肺癌を含む悪性新生物, 急性上気道炎, 肺炎, 急性気管支炎, 急性細気管支炎, 気管支炎,慢性閉塞性肺疾患, および気管支喘息を含むと, 外来と入院を合わせて523人(人口10万人あたり)と報告されている。

滋賀の人口100万人として、5000人以上の患者さんがおられるところ、医師の数が20名では、到底不足しているといえるだろう。

そもそも全国的に見ても、呼吸器内科医は少ない。


2007年現在の主要学会会員数 (かっこ内は専門医数)

日本呼吸器学会 10224名(3854名)
日本循環器病学会 22832名(10354名)
日本消化器病学会 27000名(15620名)


その理由のひとつは、呼吸器科医は臨床に熱心(熱心に患者さんの診療に当たる)なあまり、基礎研究などに従事するドクターが少ない→論文を量産して教授になる人が少ない→呼吸器科の教授が少なく、呼吸器科医の養成にも不熱心、という図式がある。

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posted by 長尾大志 at 22:56 | Comment(2) | 教育理念・メッセージ
この記事へのコメント
当方、人口20万の医療圏を抱える田舎の臨床研修癌拠点病院の呼吸科医です。近隣の病院は、肺癌と特に肺線維症は、ほとんどおまかせ紹介です、HOTも身入りの良いうちは管理しますが、夜間や増悪だと対応しません。今まで、呼吸器専門医3人で癌医療、HOTなど24時間の救急にも対応してきました。しかし、この度、部長が家庭の事情で辞職することになり、医局からの後任の派遣は望めそうにありません(地方大学故、ローテーションで呼吸器を経験すると入局しないのです)。また、心を病む呼吸科医も数多く私の医局では、看取りの多さ、夜間呼び出しの多さで、近年数名が長期休職しました。私は、延べ千例を越える抗癌剤治療経験の頃スモーカーのショック死を経験しました。それからは、それまでの患者さん自身の喫煙習慣と、治療で得られるMST数ヶ月の延命について、ご本人の死生観をよーく伺い、抗癌剤治療を希望される方は一度他施設のセカンドオピニオンを受けていただき、それでもやるという人のみに行っております。私は、病院勤務の専門医故、紹介でパンクする前に、私が病院を辞めるか専門医を辞めるか現在思案中です。
Posted by 内科の産科ですね。 at 2009年10月09日 15:42
まったく、おっしゃるとおりです。

滋賀でも、医局からの派遣がないために勤務医を辞めざるを得なくなった呼吸器科医が少なくありません。

私たち滋賀医大呼吸器内科は、産声を上げてまだ6年と若い医局ですが、やる気のある優秀な若いドクターが入局してくれて、少しずつですが力を蓄えています。

まだまだ、育成には時間がかかりますが、医療崩壊の特効薬はなく、地道な人材育成あるのみと考え、日々を過ごしています。

また、呼吸器科以外の道を志望する医師こそ、呼吸器科の知識が必要であると痛感しています。大学でこそ可能な「教育」に、今一番力を入れています。
Posted by 長尾 at 2009年10月15日 10:55
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