マスコミの報道では、小児科医、産科医が少ない、医療崩壊だという。
実は滋賀において、呼吸器内科医はもっと少ないのだが、「内科」にくくられているため、統計上、表には出て来ないのである。呼吸器内科の医療崩壊はずっと深刻である。
全国的にも呼吸器内科は「内科の中の産科」と言われている。
滋賀には呼吸器内科を専門とする開業医の先生はほとんどおられない。
勤務医でも、最近府立大の引き上げなどあり、滋賀県全体で20人前後である。
滋賀に呼吸器内科医が少ないのはなぜか。
理由は明白である。滋賀医大に30年以上呼吸器内科講座がなかったため、呼吸器内科医が養成されなかった。そのため、滋賀の呼吸器科医は、京大、京都府立医大からのわずかな派遣に頼っているのが現状である。そのわずかな派遣さえも、絶たれようとしている。
ちなみに呼吸器内科領域の患者数は, 肺癌を含む悪性新生物, 急性上気道炎, 肺炎, 急性気管支炎, 急性細気管支炎, 気管支炎,慢性閉塞性肺疾患, および気管支喘息を含むと, 外来と入院を合わせて523人(人口10万人あたり)と報告されている。
滋賀の人口100万人として、5000人以上の患者さんがおられるところ、医師の数が20名では、到底不足しているといえるだろう。
そもそも全国的に見ても、呼吸器内科医は少ない。
2007年現在の主要学会会員数 (かっこ内は専門医数)
日本呼吸器学会 10224名(3854名)
日本循環器病学会 22832名(10354名)
日本消化器病学会 27000名(15620名)
その理由のひとつは、呼吸器科医は臨床に熱心(熱心に患者さんの診療に当たる)なあまり、基礎研究などに従事するドクターが少ない→論文を量産して教授になる人が少ない→呼吸器科の教授が少なく、呼吸器科医の養成にも不熱心、という図式がある。
滋賀でも、医局からの派遣がないために勤務医を辞めざるを得なくなった呼吸器科医が少なくありません。
私たち滋賀医大呼吸器内科は、産声を上げてまだ6年と若い医局ですが、やる気のある優秀な若いドクターが入局してくれて、少しずつですが力を蓄えています。
まだまだ、育成には時間がかかりますが、医療崩壊の特効薬はなく、地道な人材育成あるのみと考え、日々を過ごしています。
また、呼吸器科以外の道を志望する医師こそ、呼吸器科の知識が必要であると痛感しています。大学でこそ可能な「教育」に、今一番力を入れています。