2010年04月06日

H先生との約束

今はTよろづ病院におられるH先生は、私が滋賀医大に着任する前からおられ、滋賀医大呼吸器内科研修医教育の先鞭を付けられた方である。

ブロンコ体操、リンパ節体操を滋賀医大に導入された宣教師としての側面はもちろんだが、常に学生、若い先生の「教育」に配慮されていて、滋賀医大に来た当時の私は、これぞ指導医の鑑である、と刮目したものである。ともに働いた3年間は、互いに(と、私は信じている)切磋琢磨させていただき、大変勉強になった。

常々言い合っていたことは、「私たちが臨床をがんばるのも大変大事なことであるが、大学にいる以上、若い人たちの教育をがんばることもまた、大事なことではないか。臨床の現場では目の前にいる1人の患者さんを救うことになるが、多くの若い人を教育することは、(特に、呼吸器内科医のいない、ここ滋賀においては)もっともっと多くの患者さんを救えることになるのではないか。」ということ。

もちろん、呼吸器内科医を育てることができれば、それに越したことはない。しかし、仮に他科に行っても、呼吸器内科的知識のある医師を多く輩出することができれば…。

そういう思いで、がんばってきたわけであるが、H先生はT病院に行かれることとなった。志半ばでの転任であること、また、1人残る私の負担が加重になることを気遣われて、いろいろと話し合ったものである。

去られるときに、H先生と交わした約束:「先生に道を付けていただいた、滋賀医大の教育システムは、絶やさないようしっかり受け継がせていただきます。」

転任されてからも気配りをいただき、学会場ではよく声をかけていただくが、一度、お会いしたときに、「日本で一流と言われているT病院の基準に照らし合わせても、僕たちがやっていたことは遜色がない。自信を持って、進めていってほしい。」とお言葉をいただいた。

現在、滋賀医大出身のシニアレジデントが1名、同病院で研修中である。彼の言葉でこの稿を締めくくる。
「T病院には全国から優秀な研修医が集まっていますが、他病院・大学出身の研修医は割とほったらかされていて、我流でやっていたり、本に載っている以上の知識がなかったりします。自分が2年目から3年目の1年半ここで過ごした間に、他の病院や大学で研修するよりも、群を抜いて多くの事柄を教えていただいていたことを実感します。大学で学んでよかったと思っています。」

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posted by 長尾大志 at 11:03 | Comment(0) | 教育理念・メッセージ
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