2011年01月31日

呼吸器内科はどんな科?

呼吸器内科とは、まず何はなくとも、総合内科であるわけですが、同時に感染症科であり、腫瘍内科であり、アレルギー科であり、放射線科であり、病理部であり、緩和ケア科であり、そして呼吸器科でもあるのです。取り扱う疾患は広範囲、多岐にわたります。

言うなれば、高齢者のための小児科、とでも申しましょうか。


それで、ものすご〜く深く患者さんと関わる科です。まあ最近は「全人的医療」という言葉が、とっても軽く使われることが多いのですが、取り扱う疾患の性質上、患者さんのtotal managementを行うことになりますので、風邪のようなプライマリ・ケア的対応から、看取りに至るまで、さまざまなステージの患者さんに対して、看板だけではない、真の「全人的医療」を実践することになります。


身につけるスキルというのは手技的なものはそれほど多くありませんが、知識としてはあらゆる系統(抗生剤、ステロイド、胃腸薬、ビスホスフォネート、抗癌剤、抗アレルギー薬、降圧薬、高脂血症薬、その他もろもろ)の薬剤の特徴、使用法、副作用に至るまできちんとした知識が必要とされます(例えば、「ステロイドを処方しといて」と言われて、ステロイドだけを処方しているようではダメです)。

そして、いわゆる総合内科医としての、total managementを行うための知識、これはそれこそ多岐にわたり、一口では語れませんが、多くの知識を総合して事に当たる必要があります。


そういうわけで、呼吸器内科は内科の中でもっとも内科らしいといえるでしょう。



なので、ローテーターで1ヶ月ぐらい回ってきたところで、全貌を知るのはどだい無理です。ましてや入院患者さんの受け持ちだけだと、経験できる疾患の数も知れている。ですから、バランスの取れた内科医を目指す方は、ローテート期間中に最低3ヶ月は研修すべきです。将来呼吸器内科を目指すのであれば、ローテート期間中は他科を見ておいた方がいいと思いますが…。



当院に限らず、研修病院での呼吸器内科入院症例は肺癌がそのほとんどを占めるのが現状ですが、肺癌は呼吸器初学者にとって、この上なく勉強になる症例なのです。理由は…

・レントゲン、CTの読影の基礎が学べる。特に肺野の結節や縦隔リンパ節の存在診断を繰り返し行い、陰影の拡大、縮小を見ることはためになる。また、無気肺、胸水もしばしば経験される。

・いろいろな薬を使う。抗癌剤はもちろん、ステロイド、G-CSFから疼痛管理のオピオイド、発熱すれば抗生剤、NSAIDsまで、あらゆるジャンルの薬を使うことになる。

・いろいろなことが起こるので、手技機会に恵まれる。血ガス、ルート確保に始まり、胸腔穿刺やドレナージ、癒着術、中心静脈から場合によっては挿管、人工呼吸管理まで、一通りのことが起こりうる。

これで呼吸器内科、というか、内科の基礎を学ぶことができます。本当に呼吸器内科がおもしろくなるのは、外来をやり始めて、対診を受けるようになってからなのかも。

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posted by 長尾大志 at 12:38 | Comment(0) | 教育理念・メッセージ
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