眼内、膀胱内に注入した薬でも起こったりするのですよ。
先頃、日本内科学会誌1月号に、薬剤性肺障害の最前線、という記事が掲載されていました。(日本医科大学斎藤先生、弦間先生著)。
私なんぞが一から書くよりもずっと整理して書かれていましたので、内科学会に所属されて学会誌が届いている全ての先生方に、是非ご一読をお願いしたいところですが、学生さんや若い先生で、アクセスできない方もあろうかと思いますので、内容をかいつまんで紹介します。
薬剤性肺障害は現在でも非常に重要な疾患群ですが、さらに今後ますます重要度が高まると考えられています。
それはなぜか。
近年どんどん開発されている、抗癌剤(分子標的薬)、抗リウマチ薬などの副作用として多く見られるものであるため、今後ますます症例数の増加が予想され、また、欧米人よりも、日本人に発現頻度が高く、遺伝的素因が考えられていることもあります。
診断について
やはり、まずは薬剤性肺障害を疑うことが重要で、薬剤投与、摂取歴を詳細に聴取すること、もちろんこれは内科医の基本ではありますが、呼吸器内科医では特に求められるスキルであります。
特に、比較的急性〜亜急性に発症し、典型的な特発性間質性肺炎の画像に合致しないようなパターンを取っていると、疑われることが多いです。
薬剤性肺障害の可能性があると判断した場合には、被疑薬でそれまでに薬剤性肺障害の報告があるかどうか、あれば、その臨床病型(表現型:CTのパターンや他の検査所見、臨床経過など)はこのたびのepisodeに合致するか、を確認する必要があります。
診断基準は、以下の通り。
- 原因となる薬剤の投与歴があること
- 臨床・画像・病理所見が被疑薬剤に関する過去の報告と一致すること
- 薬剤以外の原因を除外すること
- 被疑薬剤の中止により改善すること
- 再投与により症状が再燃すること
再投与は今では倫理的に問題があり、行いません。
薬剤以外の原因、特に、すりガラス影を呈する間質性肺炎の原因となる感染症の除外は重要です。ニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルスをはじめとするウイルス性肺炎では、抗原や血清マーカーがいくつか適用でき、鑑別に役立ちます。
診断の参考に、薬剤リンパ球刺激試験(DLST)がしばしば実施されますが、偽陽性、偽陰性が多く、結果の解釈はしばしば難しいものです。なかなかクリアカットにこの数字を満たしたら診断、といえるものはありません。
最終的には経過を含めた総合判断、ということになり、臨床的センスが問われるところであります。
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