2011年03月28日

間質性肺疾患10・注目される薬剤性肺障害の新規原因薬剤

日本内科学会誌1月号、薬剤性肺障害の最前線、という記事(日本医科大学斎藤先生、弦間先生著)より。


薬剤性肺障害で有名なものはゲフィチニブ(イレッサ)がありますが、同様に最近はやりの分子標的薬で、いくつか発症が報告されています。

間質性肺炎が重点調査項目とされている新規薬剤は以下のようなものがあるそうです。


エルロチニブ(タルセバ)
イレッサと同じEGFR-TKIで、非小細胞肺癌に使われます。
副作用調査では4,662例中237例(5.08%)に間質性肺炎が見られ、死亡例は65例でした。


ボルテゾミブ(ベルケイド)
再発または難治性多発性骨髄腫に対して承認されたプロテアソーム阻害薬です。何らかの造血幹細胞移植を施行されていることが危険因子で、ステロイドの併用はリスク減少因子です。
特定使用成績調査の中間解析では、525例中22例(4.19%)に間質性肺炎/肺障害が発現し、重篤例は11例(2.10%)でした。


セツキシマブ(アービタックス)
EGFR陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対して承認された抗ヒトEGFRモノクローナル抗体です。
市販直後調査では、3,436例中、16例の間質性肺炎が報告され、全例が重篤であり、うち4例が死亡されています。


ソラフェニブ(ネクサバール)
根治切除不能または転移性の腎細胞癌、肝細胞癌に対するキナーゼ阻害薬です。
特定使用成績調査では2,010例中5例の間質性肺炎か報告され、うち2例が亡くなっています。なお、ソラフェニブによる間質性肺炎は全例が胸水を伴っていたということです。


スニチニブ(スーテント)
イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍、根治切除不能または転移性の腎細胞癌に対するキナーゼ阻害薬です。
市販直後調査結果では、664例中2例の間質性肺疾患が報告され、うち1例が死亡に至っています。


エベロリムス(アフィニトール)
根治切除不能または転移性の腎細胞癌に使われるmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬で、間質性肺疾患の発現頻度が非常に高いことが知られています。
頻度は高いのですが、軽症例も多く、薬剤性肺障害が発現しても無症状であれば投与を継続することが可能とされています。


他に、最近使われるようになってきた抗リウマチ薬では既に多くの事例が知られています。もともとリウマチには間質性肺炎の合併が多いため、薬剤そのものによる肺障害との鑑別が困難であることも多いのですが、薬剤開始前後でCTや各種指標を比較し、これまでの報告を参照することで診断は可能です。

古くは金製剤、最近よく使われるメトトレキサートやレフルノミド(アラバ)、他の生物製剤でも注意喚起されていますので、気をつけましょう。


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posted by 長尾大志 at 09:25 | Comment(0) | 間質性肺疾患シリーズ
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