急性の咳で、胸部X線写真やSpO2に異常がなく、
症状的にも「普通感冒」で矛盾がなければ、
対症療法で経過を見ていただくことになるでしょう。
その際によく使われる薬としては、
総合感冒薬や中枢性鎮咳薬、去痰薬に抗炎症薬などがあげられます。
■中枢性鎮咳薬は、咳中枢の感度を鈍らせて咳を止めるもの。
一般的によく使われる「咳止め」ですね。
誤嚥がある場合には咳の感度が鈍ることで悪化の危険性があるため、
誤嚥の有無に注意して使うべきです。
■去痰薬は、痰を減らし、切りやすくして結果的に咳を減らすもの。
■抗炎症薬は、喉などの炎症を抑えて咳を止めるものですが、最近では「ダーゼン」が、「期待される有効性が検証困難」として自主回収になるなど、効果に疑問符がつく例が多いようです。
■総合感冒薬は、これらに加えて抗ヒスタミン薬・NSAIDsなどを配合し、多くの「風邪の諸症状」と言われる、咳・痰・咽頭痛・鼻症状・発熱などに広く効果を現すものです。
ここでよく問題となるのが、「抗生物質・抗生剤」です。
昔からの?ドクターが、上記の薬と合わせて抗生剤を処方するケースが多い一方、
「感冒」の治療に、抗生剤はナンセンス、とするドクターも増えています。
そもそも抗生剤の乱用が薬剤耐性菌、MRSAなどを生んだことはよく知られています。特に小児科で頻用されたニューマクロライドの現状は、惨憺たるものです。
また、最近では、二歳以下の小児に抗生剤を投与することがアレルギー疾患発症のリスクになるのではないか、という意見もあり、小児科で抗生剤を処方されないケースも多くなってきているようです。
では、全ての「感冒のような症状」の治療に、抗生剤はナンセンスなのか?
必ずしもそうとは思いません。
例えば、副鼻腔炎から上気道症状を来した場合、抗生剤を使わないと治りにくい。
例えば、COPDや間質性肺炎など、慢性呼吸器疾患がある場合、感染を契機に急性悪化を起こすことが知られており、また、細菌感染が起こることも多い。
これらのように、少なくとも痰の色が緑色や汚い色に変わるなど、細菌性炎症の存在が考えられれば、抗生物質を投与する適応はあると思います。
普通感冒(ウイルス感染)はせいぜい1週間〜長くても10日で軽快するはずのものです。
それでも軽快しない場合には、慢性の咳として、多くの疾患を鑑別する必要が生じてきます。ですので、急性の咳と診断したときにも、「良くならなければ、また来て下さい」と付け加えておくとよいでしょう。
咳の鑑別を最初から読む
2011年05月12日
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