胃・食道逆流症は、胸部レントゲン写真で異常がない慢性の咳のうち、なかなか気づかれることのない原因の代表です。何年も、「鎮咳薬」で放置されている気の毒な患者さんも少なくありません。
というのも、通常、胃・食道逆流症は、消化器疾患であると思われているからです。で、消化器科の医師は、胃・食道逆流症で咳が出る、ということをご存じないことが多い。
結果、胃・食道逆流症と咳を結びつけて考えてもらえる機会がない=咳の放置、ということになるのです。
ここで何でも知っている(と期待されている)呼吸器内科の医師としては、ばっちり診断を付けて「さすが!」とならなくてはいけません。
まず、胃・食道逆流症を疑う症状、症候ですが、これは結構患者さんによって表現が違い、判断に迷うことも多いのですが、一般には、胸焼けのような症状とか、ゲップが多いなどと表現されます。
それ以外には、胸のつかえ感、酸っぱいものがあがってくる、喉〜胸部の異物感、違和感、嚥下時の引っかかり感など、多彩な表現をされることもあり、慎重な病歴聴取が必要です。
また、逆流が強くなるような状況、すなわち、かがんだときや食後(特に食べ過ぎたあと)、就寝時や起床時に咳が強くなる、ということも疑う材料になります。
注意点として、胃・食道逆流症が喘息の誘因になる、あるいは悪化させることがあり、併発していることも少なくない点があります。
また、就寝時〜起床時に症状が強いという点では喘息も同様です。
ということは、しばしば喘息との鑑別が困難であったり、片方の治療だけを行っても良くならない、という事態が想定されますので、注意しましょう。喘息、ならびに胃・食道逆流症のそれぞれについて診断、評価する姿勢が大切です。
診断には24時間pHモニターが使われますが、日常臨床ではそこまで行われることは少なく、PPIを投与して有効であれば胃・食道逆流症による咳嗽である、と臨床診断できることになっています。
上部消化管内視鏡では胃・食道逆流症の検出感度は低いものの、他疾患の鑑別のために施行することが望ましいとされています。
治療はそのままPPIの継続であり、通常は4週間以上の投与が推奨されています。
胃・食道逆流症の治療によって、喘息症状も改善することが知られています。
咳の鑑別を最初から読む
2011年05月19日
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