ここで、結核菌の特徴をまとめておきましょう。
結核菌は脂質に富み、一旦染色されると酸では脱色されない抗酸性を持った菌です。最後に酸で脱色するチール・ニールセン染色で色が残り、オレンジ色に浮き上がって見えるのです。抗酸性のため、胃液内でも生存できる数少ない菌です(まあ、抗酸菌はすべてそうですが…)。
菌としては好気性菌で、至適発育温度37℃、少量のCO2が存在すると発育が促進されます。このような場所は、地球上で、いや、おそらく全宇宙を探しても、ヒトの体内しかないでしょう。そうです。結核菌はヒトの体内でしか生きられないのです。
これに対して、非結核性抗酸菌のほとんどは、環境での生息が可能です。
例えば咳などで体外に出ても、飛沫核が他人の気管支に入らなければ、地面に落ちてしまい、じきに失活します。ですから、食器や衣服などの共用も、神経質になる必要はありません。
ヒトの体外では長期間生存出来ないということは、感染はヒトからヒトにうつることでのみ、成立することになります。これに対して、非結核性抗酸菌ではヒト−ヒト感染は通常起こらないと言われています。
また結核菌は細胞分裂速度が遅く、増えるときはゆっくりと増えますが、減るときもゆっくりと減るという性質があります。1個の菌が2個になるには15時間かかるのですが、大腸菌では20分くらいしかかかりません。
つまり、進行も比較的ゆっくり、慢性に起こってくるということ。そして治療開始して効果が出てきても、症状改善に時間がかかり、治療期間も長期間にわたるということです。
こうした特徴を知っておくことで、結核という病気の特徴を理解することができるのです。
長い長い結核の話を最初から読む
2011年07月29日
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