2007年から結核予防法が廃止され、改正感染症法によって結核対策が行われています。その中で、以前は「予防内服」とよばれていたものが「潜在性結核感染症の治療」というふうに変わりました。
かつては発病を防ぐという意味で「予防」となっていたものが、今では感染している菌を殺す治療、という意味で「治療」といわれるようになった、ということです。
まあ本質的には同じことで、最近結核菌に感染したと思われる(接触した)若者?の発病を防ぐ目的で行われる治療です。
すなわち、排菌患者さんとの明らかな接触があり、QFT-Gが陽性の若者は、このままにしておくと将来10%程度発病する恐れがありまして、抗結核薬をあらかじめ内服しておくことで将来の発病を予防することができる、というものです。
ちなみに若者って何歳まで?ということですが、自分が若いと思っていれば、何歳でもよいようです…。冗談はさておき、実は現在、潜在性結核感染症治療に年齢制限はありません。
そもそもなぜ「若者」かといいますと、かつての高齢者はほとんどの方が、元々結核菌に感染していたということがあります。接触したからといって殊更に予防内服をしなくても、どうせ持ってるじゃん…ということでした。
また、抗結核薬の副作用、特に肝障害が、高齢の場合頻度が高い、ということもありました。発病者の治療については、ある程度許容されるとしても、発病していない人に対する投薬で肝障害が起こるのはいかがなものか、ということがあったわけです。
というわけで、「予防内服」の時代には、それ(予防内服)を受ける条件は29歳以下となっていたわけです。
でも今や、ある程度の年齢でも「元々」結核菌を持っていない人の方が多く、新たに感染したときに将来の発病を予防する、ということには意味がありますから、年齢制限はなくなったのですね。
とはいえ、高齢者はやはり、副作用などの問題から対象にはなりにくいと思います。
さて具体的な治療法ですが、潜在性結核感染症というのは発病していないわけですから、このときは体内の菌量はごく少量であるわけです。ですから発病してからの治療とは異なり、抗結核薬は一剤でOKです。
わが国では、明らかに最近感染を受けた(接触歴があり、QFT-G陽性である)主に若年者に対して、INH 5mg/kg(成人:最大300mg/日)、または8〜15mg/kg (小児:最大300mg/日)の予防内服を6〜9ヶ月間行う、ということになっています。
接触した排菌患者がINH耐性であった場合は、RFPを使って治療を行います。
長い長い結核の話を最初から読む
予防内服について、大変分かり安い説明で、目からうろこ、すっきり致しました。
ありがとうございます!とてもうれしかったので、お礼まで。
医療事務の方にもわかりやすかったと言っていただけたのはうれしいですね。
はじめまして。
私は医療従事者で、職場のQFT検査で陽性が出て潜在性結核感染と診断された者です。
近い将来に結婚が控えている為、予防内服治療をする決心がつかず悩んでいます。
勤務先の病院では結核患者さんはほぼゼロであり、勤務前は米国にいた為、ここ5年間での菌の暴露は考えられず、おそらく7〜10年前と考えられます。
内服によって、もし万が一月経不順などになり妊娠出産に影響が出たら、
と思うと怖くてたまりません。
お忙しいとは思いますが、先生のお考えを聞かせて頂けたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
一方、妊婦さんでも、直近に明らかな暴露があれば、INH内服は可能とされています。
不特定多数の方がご覧になるネット上で私が責任を持って言えるのはここまでです。やったほうがいいですとか、やらないほうがいいですとは申せませんのでご理解ください。
コメントどうもありがとうございます。
ネット上ということを忘れ、私も軽率でした。
すみません。ですがここまでお答え下さり、
参考になりました。もう少し考えたいと思います。
判定保留ということで後日,ツベルクリン検査を受けることになりました。微熱もありませんし食欲もあります。今後のことが不安で,入院することになるのでしょうか。
はじめまして。
5月に母親が結核で入院し現在も入院中です。
私も接触者として保健所で検診を受けてます。
8月に血液検査で陽性で潜在性結核感染症と診断されました。予防薬を進められましたが母親が酷い蕁麻疹の副作用にあい、それを見ていたので怖く二年間のレントゲン経過をする事にしました。ですが孫が産まれ心配になり予防薬を飲むべきかと悩んでいます。孫は私の母親とは接触していませんが私がお見舞いへ行っていて孫と接触するので心配です。私は喘息の薬やら胃潰瘍の薬やらと飲んでおり副作用も心配です。孫の為に予防薬は飲んだ方が良いですか?忙しい所すみませんが宜しくお願いします。
青柳様とお孫さんが接触される場合、青柳様が「発症していれば」お孫さんに伝搬する可能性があります。その確率は同居されていれば25〜50%とされています。同居されていなければ数%程度でしょう。
新生児期に結核菌に曝露することは避けるべきです。悩ましいことに、青柳様が免疫学的に問題ないとして、2年以内に発症する確率は10%に満たないのです。
その確率をゼロに限りなく近づけるためには、潜在性結核感染症の治療を行うべき、ということになります。もちろん副作用の恐れはあります。
不特定多数の方がご覧になるネット上で私が責任を持って言えるのはここまでです。やったほうがいいですとか、やらないほうがいいですとは申せませんのでご理解ください。
コメントありがとうございます。
とても心強いお言葉ありがとうございました。
お礼のお言葉が遅くなり申し訳ありませんでした。
孫の為に最善の選択をしようと思います。
本当にありがとうございました。
職場でクオンティフェロン陽性が発覚し、イスコチンを半年間内服していました。
発症はせず、2年間の経過観察も終了し、現在1年経つところです。
妊娠を希望しているのですが、胎児に影響は出ますか?
BCGは現在生後8ヶ月までの接種推奨となっており、先日 生後8ヶ月の息子に接種しました。翌日から発赤、針跡の白いもの(やがて化膿)があり、保健所から紹介された病院で検査をしております。接種7日目ツベルクリン注射、結果は10mm超で、胸レントゲン異常なし、胃液の3日間連続採取検査、血液検査後、投薬治療になってしまいました。近親者に結核感染者はいませんし、保育園などにも通わせておりません。しかし息子は結核菌に感染しているということなのでしょうか?主治医の先生は、感染の可能性がゼロでないので…との説明でした。
疑わしいだけで半年間の投薬は小さい体に負担がかかり心配です。いまのところ息子は元気で特に症状などはありません。こういったケースは稀なことなどでしょうか?少し気がかりなことは、突発疹から胃腸炎になり、突発疹からは2週間経過したのですが胃腸炎治癒から10日後程でBCGを接種させてしまいました。コッホ現象は仕方ないとしてもツ反が陽性にはなるのは、やはり感染なのでしょうか?色々調べたのですが小児はどんな検査をしても感染の有無がはっきりしないのでしょうか?
不躾な質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
主治医の先生も予想外の結果だそうで、質問に対して次までに調べておきます!という状況で、不信感があるわけではないのですが…しっかりお話ししたいと思います。
1つ質問があるのですが、以前、活動性肺結核のため内服治療をきちんと行い、その後経過で問題なかった(再発がみられなかった)方が、別の疾患でPSLや免疫抑制療法を行う必要がある場合は予防内服(潜在性結核感染症の治療)は必要なのでしょうか。
こちらの認識ではしっかりと治療した後であり、予防内服はいらないと考えておりますが、どうでしょうか。
お忙しいところ大変申し訳ございませんがご教授お願いします。
現在行っている4剤による内服治療を完遂した場合には、再発はほぼないとされています。それはすなわち体内の菌量がほぼ0に近い=免疫を落としても大丈夫、ということではないでしょうか。
一般論として、医師の立場からは、潜在性結核と判明しているのであれば、幼稚園児に接する仕事に就くにあたっては治療をすべきだと思います。
それで内定取り消しになるかどうかは、園の方針などもあり私にはわかりません。しかしそれを隠して就職し、発症してしまうと園に多大な迷惑をかけてしまう恐れがあります。私に言えるのはここまでです。
以前病院に勤めていたときにクォンティフェロン検査をして陽性になったことがあります。6年くらい前かと思います。
その時にはCTなど撮って問題なかったようでした。予防内服について担当医師から自己責任でするかどうか決めてといわれ、副作用も気になったので結局行わず、その後のフォローなどもなく過ごしておりました。そのため私は特に結核ではないと思っていました。
さて最近子供が産まれて近々BCGの予防接種をすることとなり、以前陽性が出たことを思い出してネットなどで調べてみたところこちらに行き着きました。潜在性だとか、予防内服しなければ今後の発症率が上がるという説明は当時全くなかったので、予防内服しなかったことにとても後悔してしているところです。
特に今のところ私に咳など症状は有りませんが、発症している可能性はあるのでしょうか?
そうすると子供にBCGを受けさせるのは危険なのでしょうか?
今更ながら呼吸器科にかかったほうが良いのでしょうか?
とても不安です。お忙しいところ申し訳ありませんが、お答え頂ければ嬉しいです。
上にも記載がありますとおり、「個別の医療相談にはお答えをいたしかねます。患者さんのすべてを理解して行わなくては、責任のある回答はできません。」ということでして、どうぞご理解をいただけますと幸いです。