2011年08月18日

長い長い結核の話23・結核の治療についての大原則2・耐性菌出現の機序

治療の大原則はもう1つあります。それは、耐性菌の出現を防ぐため、単独ではなく複数の薬を組み合わせて使用するということです。


同じ薬をずっと使っていると、その薬が効かない菌がだんだん増えてくる、これを薬剤耐性といいますが、結核は治療が長期にわたるため、この耐性が出やすいようです。



結核菌がたくさんいる病巣の中には、1万分の1〜数億分の1の割合で必ず何らかの薬剤に対する自然耐性菌が含まれています。


空洞をもつ病変内には1億〜10億個程度の結核菌がいるわけで、1億の1万分の1としても1万個の自然耐性菌がいることになります。


で、抗結核薬を単独で使用すると、使用した薬に対する自然耐性菌が生き残り、最終的にはその患者の菌がほとんど「その薬の耐性菌」になるのです。
これが薬剤耐性を『獲得する』メカニズムなのです。


耐性菌機序.jpg


そんなわけで、耐性菌の出現を防ぐためには単独ではなく、最低2剤の薬が必要となります。はじめから耐性菌の感染である可能性や、病巣内の菌量がきわめて多い可能性もあるので、3剤以上の使用が望ましく、現在日本での標準治療は、当初2ヶ月間は4剤!併用となっています。


少なくとも、3剤使うと…

1万分の1×1万分の1×1万分の1=1兆分の1ですから、

10億個菌がいても大丈夫!となりますね。


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posted by 長尾大志 at 09:16 | Comment(0) | 長い長い結核の話
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