2011年08月19日

長い長い結核の話24・結核の標準的治療法について

それでは、標準療法の紹介です。これまでにもいくらか細かい点で変更はあったのですが、現在のところは下の治療がスタンダードです。


A法(普通はこちら)
INH, RFP, SM (orEB), PZAの4剤をを2ヶ月間投与、
その後、 INH, RFPの2剤を4ヶ月間投与、計6ヶ月間で治療を終了する。


B法
非代償性肝硬変、AST、ALTが基準値の3倍以上で経過する慢性C型肝炎、高齢(80歳以上)、などで、薬剤性肝障害を合併したときに重篤化が予想される場合にはPZAを使わないでおくため、3剤併用からスタートします。

INH, RFP, SM (orEB)の3剤を2ヶ月間投与、
その後、 INH, RFPの2剤を7ヶ月間投与、計9ヶ月間で治療を終了する。


要するにあくまで、結核をきっちり治すためのスタンダードは当初4剤併用6ヶ月で、最初の治療に4剤使えない場合には、3ヶ月間長めに治療することでそれを補おうという考え方なのです。


それ以外に、以下のようなケースではA法、B法いずれの場合でもさらに3ヶ月間治療を追加します。


  • 広範な空洞を有して菌量が極端に多いと思われる例

  • 粟粒結核などの重症例

  • 初期2ヶ月の治療終了後も培養陽性である例

  • 糖尿病、じん肺など、免疫抑制を来す疾患の合併例

  • ステロイドなど、免疫抑制治療中の例




最初だけ4剤で、あとになると2剤でいいのはなぜか?

それはもう、治療開始時の菌量が多いから。
2ヶ月間4剤投与すれば、ぐんぐん菌は減って、その後は2剤で事足りるというわけです。


最初の2ヶ月は、初期の急性炎症であり、病変部は酸性の組織です。で、PZAという薬は酸性組織下の菌にのみ効果があるという特異性があり、治療開始して3ヶ月も経てば組織は中性〜アルカリ性となるため、もはやPZAは効果を発揮しないという面もあります。

ですから、特にPZAは初期のみの併用薬として使われるわけです。



また、治療は何よりもコンプライアンスといいますか、ちゃんと治療終了まで薬を飲む、ということが重要ですので、原則として1日1回投与になっています。


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posted by 長尾大志 at 09:24 | Comment(0) | 長い長い結核の話
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