MAC症:細気管支の粒状影(tree-in-bud、小葉中心性粒状影)、気管支拡張とその末梢の胸膜肥厚、空洞形成
M.kansasii症:薄壁空洞
これはMAC症

これも同じ症例、細気管支の粒状影(tree-in-bud、小葉中心性粒状影)、気管支拡張とその末梢の胸膜肥厚、空洞形成すべての所見がそろっています。

MAC症についてはいろいろな知見があり、これらの所見が成立する機序がある程度推測されています。
環境中(シャワーや植物、公園の水飲み場など)に存在していた菌が、まず肺内に入る場所は肺の一番外側、胸膜に比較的近い線毛のない呼吸細気管支です。
そこで病変(肉芽腫)を作り、菌はリンパの流れに乗って肺門リンパ節の方に流れていきます。
気管支粘膜に沿ってリンパ流がありますから、その粘膜下に肉芽腫を作っていくわけです。その肉芽腫が気管支軟骨、平滑筋を破壊し、周囲に線維化が起こってその結果、気管支拡張を来すと考えられます。
リンパの流れは肺の外側から肺門に向かって流れますから、気管支拡張も肺の外側から肺門に向かって進行していくというわけです。
だいたい、小さな粒状影(肉芽腫)が気管支拡張を作ってくるのに10年かかるといわれています。ゆっくりゆっくり、進行していくのです。
ちなみに、肉芽腫病変の成分、リンパ球や類上皮細胞、ランゲルハンス巨細胞などは、肺胞隔壁のcohn孔を通り抜けられる大きさではないため、呼吸細気管支周囲で5mm程度の粒状の病変を作ります。
気管支病変に続くこの粒状の病変こそが、特徴的なtree-in-budをなすのです。
肺炎球菌などが作る病変は好中球主体であり、cohn孔を容易に通り抜けるため、肺胞から肺胞へ、連続性に広がります。その結果できるのは、べたっとした浸潤影なのです。
陰影の性状の成り立ちには、きちんとわけがあるのですね。
このあたりのことはポリクリで詳しく触れるのですが、著作権の問題などあり、このブログで触れることはできません。
また、いつの日か、オリジナルの図表ができましたら、ご紹介したいと思います。
今日のお話は、7月の呼吸器学会地方会でお話を伺った、琉球大学の藤田次郎先生のご講演内容をベースにさせていただきました。この場を借りましてお礼を申し上げます。
それほど長くない非結核性抗酸菌症の話を最初から読む
私は経過観察2年目のMycobacterium avium患者(50代やせ型女性、東京在住)です。順調に推移してきましたが、先週のCTで新たな粒状影出現がわかり、薬の治療を始めるかどうかの分岐点です。現在の病院の呼吸器内科から症例数が日本一多いT病院での診察を勧められ、来月受診します。そこで方針が決まるでしょう。
これまでも非結核性抗酸菌症についてのサイトは相当数読んできましたが、この4を読んで初めて自分の胸の中で何がどう進行しているのか、どういう状態なのかが筋道立てて理解できました。
TREE IN BUDという文学的な表現(?)も初めて知りました。なるほど、そう見えますね(笑)。
現在の治療の問題点は以前から承知していましたので、増悪がわかりショックでした。しかし、病気の仕組みを理解することで、気持ちを立て直すことが出来ました。ありがとうございます。
私の胸の中に在る「芽吹き」と覚悟を決めて付き合っていきます(「満開」はイヤです〜)。
先生がこのブログを始められた志と高度で実践的な内容に深く敬意を表します。医師向けに書かれているサイトに一般患者が書き込むのは遠慮がありましたが、ひと言御礼を申し上げたく書かせて頂きました。
このようなご意見をいただき、大変励みになると共にモチベーションが高まる思いです。
おっしゃるとおり、非結核性抗酸菌症の治療に関しては、意見が分かれるところもあったり、悩ましいところもあったりですので、症例の多いご施設でのご相談が妥当と思います。
敵を知り、己を知れば、百戦危うからず、とも申します。まずは正しい知識をお持ちいただけたと思いますので、今後もどうぞ前向きに病気に向き合っていただければと思います。
これまで非結核性抗酸菌症のサイトを3年間見ながら、自身の疾患へ理解を深め進行の阻止に努めてきました。この度、偶然にも長尾先生のサイトを拝見し、これまでの情報では得られなかった知識や見解が広がり大変参考になりました。
自己紹介が後になりましたが、私は千葉県在住の主婦(69歳)で3年前から肺マック(アビウム感染)気管支拡張症、中葉症候群、無機肺など関連の合併症(?)の疾患で、千葉県の某大学病院(呼吸器科)並びに、都内の呼吸器クリニックの両方に通院しております。(時折、都内に在住するため)
31歳時に初期胃癌手術を受け、その後重度の気管支肺炎で1ヶ月ほど入院した経緯があります。
現在はエリスロマイシン200ミリ/1日(気道感染防止のため)、インクレミン10ミリ(鉄欠性貧血のため)、また、骨密度低下でボノテオ錠50ミリ/1月もを投薬しています。
(経年劣化による身体の痛みもあります)
発病時は単なる風邪の症状に始まり、症状もそれほど自覚がないものでしたが、
最近は、痰(時折少量の血痰)・就寝時の咳・体力減退(高齢によるものでしょうか?)が増幅しているように感じます。この疾患に関する医師の治療方針には、ばらつきがあるようですね。 大学病院では2ヶ月に一度、症状を説明し、投薬の処方のためだけの通院で、痰の検査は3年間で一度だけです。
(一年前はアビウムの検出はありませんでした)
都内のクリニック(大手大学病院呼吸器科出身のドクター)では、CTの画像の詳細の解析説明、喀痰検査を受けています。また、非常に診断の説明が充実しております。
5月のCT画像では僅かに進行が見られ、痰の培養検査でも少量のアビウムが検出されています。
今後の進行状態の看視によっては、投薬量を増やすことも提案されています。
この疾患の進行は緩やかで、時には治癒する場合もあると書いてあるサイトもありましたが、高齢ということもあり、進行は否めないのでは?と自覚しながら日常生活を送っています。
一番落ち込むときは血痰を見たときですが、クリニックでは、気管支拡張症の症状で心配はないとの事ですが…
長尾先生のご意見も伺えれば幸いです。
これからも、長尾先生のサイトを時折お尋ねします。
セカンドオピニオンというものは、それこそあらゆるデータを受け取って、主治医の意見、見解もいただいた上で行われるべきものであり、推測を含めて行われるべきものではありません。それだけに時間も手間もかかるものです。
という原則を踏まえて、いただいた情報を拝見しますに、Gracierさんの受けておられる診療は全く理にかなったものであろうと推測します(結局、「推測」しかできません…)。
血痰が出ると心配される方が多い(特に女性の方は)のですが、心配の必要がないケースが多い、というのが一般論です。Gracierさんの場合にどうか、というのは、主治医でなくてはわかりません。