2011年09月16日

何気なく投与している酸素についてちゃんと考える10・ベンチュリーマスクの理屈

これまでに述べたどの方式(鼻カニュラ、簡易酸素マスク、リザーバーマスク)も、FIO2は呼吸パターンによって上下してしまいます。


それは、流れてくる酸素が吸気流速に対して圧倒的に遅いから


ゆっくり、深く息を吸うと、リザーバーに酸素がたまるのでFIO2は上がります。
早く、浅く息を吸うと、リザーバーに酸素がたまる時間がないのでFIO2は下がってしまいます。


これでは、2つの意味で困ったことが起こります。


まず、息が苦しい、と感じている患者さんは頻呼吸です。頻呼吸で分時換気量が増えると、CO2はどんどん飛んでいくのですが、O2に関してはそれほど稼げません。それゆえT型呼吸不全になるのですが、その場合に酸素投与をしても、頻呼吸だと思ったようにFIO2が上がらない、ということはままあるわけです。


2つめは、U型呼吸不全でCO2貯留、CO2ナルコーシスの危険が生じている場合です。高CO2になると意識状態が悪化し、呼吸回数が減ってきます。すると結果的に、ゆっくりとした深い呼吸になり、FIO2が上昇してしまうのです。結果、ナルコーシスが悪化、果ては呼吸停止となってしまいます。



これらのようなケースでは、FIO2を厳密に決める必要があり、そういうときに使われるのがベンチュリーマスクです。


こういう風に組み立てて使います。


酸素スライド11.JPG


図ではオレンジ色の器具がついていますが、この器具部分で流れてきた酸素と周りの空気を一定割合で混ぜ、500ml/秒以上の流速(高流量)の、FIO2の定まった酸素+空気にしてマスク部分に流します。

この方式だと、頻呼吸であろうが、徐呼吸であろうが、FIO2が一定の空気を吸入することになるのです。


酸素スライド12.jpg


酸素スライド14.JPG


器具は目標とするFIO2によって孔の大きさが変えられており、流す酸素量も異なります。この器具を交換することで、FIO2を変化させるのです。

当院で使っている器具は、以下の通り。


酸素スライド13.JPG


設定できるFIO2は24%から、最大で50%までとなっているのです。




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この記事へのコメント
長いこと仕事のブランクを経て一念発起しイザ、医療の現場へもどり、技術チェックリストを見た時「ベンチュウリーマスク」の文字懐かしさと同時にあれ?普通のマスクとどう違ったかしら」と思い検索しました。写真と詳しい説明に感激で思わず感謝の気持ちを伝えたくなりました。ありがとうございました。
Posted by 白衣の天使 at 2013年04月07日 11:35
コメントありがとうございます。復帰された場合、なかなか人に聞きにくいことなどもあろうかと思います。お役に立てて良かったです。
Posted by 長尾 大志 at 2013年04月07日 20:44
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