それは、流れてくる酸素が吸気流速に対して圧倒的に遅いから。
ゆっくり、深く息を吸うと、リザーバーに酸素がたまるのでFIO2は上がります。
早く、浅く息を吸うと、リザーバーに酸素がたまる時間がないのでFIO2は下がってしまいます。
これでは、2つの意味で困ったことが起こります。
まず、息が苦しい、と感じている患者さんは頻呼吸です。頻呼吸で分時換気量が増えると、CO2はどんどん飛んでいくのですが、O2に関してはそれほど稼げません。それゆえT型呼吸不全になるのですが、その場合に酸素投与をしても、頻呼吸だと思ったようにFIO2が上がらない、ということはままあるわけです。
2つめは、U型呼吸不全でCO2貯留、CO2ナルコーシスの危険が生じている場合です。高CO2になると意識状態が悪化し、呼吸回数が減ってきます。すると結果的に、ゆっくりとした深い呼吸になり、FIO2が上昇してしまうのです。結果、ナルコーシスが悪化、果ては呼吸停止となってしまいます。
これらのようなケースでは、FIO2を厳密に決める必要があり、そういうときに使われるのがベンチュリーマスクです。
こういう風に組み立てて使います。
図ではオレンジ色の器具がついていますが、この器具部分で流れてきた酸素と周りの空気を一定割合で混ぜ、500ml/秒以上の流速(高流量)の、FIO2の定まった酸素+空気にしてマスク部分に流します。
この方式だと、頻呼吸であろうが、徐呼吸であろうが、FIO2が一定の空気を吸入することになるのです。

器具は目標とするFIO2によって孔の大きさが変えられており、流す酸素量も異なります。この器具を交換することで、FIO2を変化させるのです。
当院で使っている器具は、以下の通り。
設定できるFIO2は24%から、最大で50%までとなっているのです。
何気なく投与している酸素についてちゃんと考えるを最初から読む