2011年11月21日

感染と発病の違い・QFTについて2

昨日のご質問の状況を考えてみると、いくつか疑問点がありますが、その解釈、想定される点を含めて考えましょう(>に続くのは引用部分です)。


特に若い、非専門の先生方にとっては身につまされるであろうところも多い今回のご質問。
是非参考にされてください。



>8年前に培養にて1という結果でがでて入院治療し完治し退院しました


培養では1+、2+等と判定するので、1は「1+」という意味でしょう。8年前に培養陽性の肺結核に罹患されて、完治された(治療を完遂された)ということだと思います。



>その後普通に生活していたのですが,先日風邪、多少の咳が1週間続いたので内科で受診したところクオンティフェロン3Gの検査をうけた方がよいとのことで検査をしました


咳が続いて内科受診された。このときに胸部X線写真で異常があったのかなかったのか、いくつかの可能性が想定されます。それによって、話の筋がだいぶ変わってきますね。


@レントゲンで異常な陰影があった。

結核の既往がある患者さんに異常影を見た場合、確かに結核再燃も除外する必要があります。ご年齢がわかりませんが、若い方であればなおさらです。


で、その結核除外にあたって、QFTをされた。ここの意図が少しわかりません。
肺結核を考えるなら喀痰検査をすべきです。痰が出なかったということでしょうか。

痰が出ない場合は胃液培養、気管支鏡と行うべきです。QFTを肺結核の診断に使用すべきではありません


Aレントゲンで異常な陰影がなかった。

ではなぜQFTを行ったのか。長引く咳の鑑別のため?でしょうか。
確かに「長引く咳は肺結核を除外すべき」ではありますが、肺結核の場合、まずレントゲンで異常影が出るはず。

レントゲンで異常な陰影がないのであれば、レントゲンで異常がない場合の鑑別診断を考えるべきでしょう。



>前述の検査において,TB抗原0、23という結果が出て,判定保留と診断がでました


困ったことに、判定保留という結果が出ました。
判定保留ということは、この値だけでは判断できないので、臨床的に総合判断しましょうということです。


あくまで臨床的に「今回結核菌に曝露したかもしれない人」が「結核菌が今回体内に入ったかどうか」を見る目的で施行を思考すべきであって、臨床的に「結核かどうか判断できないのでQFTをやってみる」、ということをするとこのような陥穽にはまることになります。



>判定保留ということで後日,ツベルクリン検査を受けることになりました。
>微熱もありませんし食欲もあります。今後のことが不安で,入院することになるのでしょうか



QFTよりも感度、特異度ともに劣るツ反をQFTのあとに行う、ひょっとしたら判定不能という結果を得て判断材料を増やす目的で行われるのでしょうか。


あまり現状のご説明もないようで、患者さんはかなりご不安な様子です。
こちらとしても、情報がそろっていないため、なかなかこれ以上のことは申せませんが、若い先生方のために、ある仮定条件でのお話を明日。


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posted by 長尾大志 at 15:01 | Comment(0) | 長い長い結核の話
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