30歳代女性、アドエア使用中、妊娠5週と判明。
さて、どうしますか?
特に若い女性の喘息患者さんを診ていると、時々ありますね。
まあ、安定している方であれば早々にパルミコートに切り替えるのですが、それなりに症状があったりすると、アドエア(シムビコート)などの合剤を引っ張るケースもあるわけで。
妊娠が判明するのはだいたい5-6週の器官形成期。なのですが、妊娠が判明するのはだいたいその辺かその後なんですね。
おきまりの添付文書では、吸入薬については「有益性投与」つまり、有益性が副作用などの危険性を上回れば投与していいですよという、よくある玉虫色のことしか書いていない。
それはそうで、製薬会社として、何かあったときの責任*をとらされないようにこういう書き方にしているわけです。
*イレッサの訴訟が記憶に新しいですが、副作用があると思われるときはそのように明示し、最終的には医師の判断と患者さんの同意を以て投与すべし、というのが世の趨勢です。
妊娠・出産・授乳などに関する「リスク」はまだまだわかっていないことが多いのが現状なのです。
もうずいぶん前ですが私が産まれる前後、つわりの治療薬であるサリドマイドという薬がありました。その薬を妊婦さんが使って、その結果手足が短い赤ちゃんが産まれる、いわゆる「サリドマイド問題」が起きました。
その頃から薬がお腹の赤ちゃんに与える影響が社会問題となったのです。その後妊娠中にはむやみにお薬を飲まないように、という考え方が徹底されてきました。
薬の妊娠中の安全性は、動物実験によって確かめられています。しかし、人体で起こることを100%予測できるわけではありません。
全く薬を使っていない妊娠においても数%の「問題となる妊娠」があるわけで、果たしてその薬が妊娠に影響するかしないのか、ということを確認するには膨大なデータが必要です。
その薬を使った群で、「問題となる妊娠」が発生する確率が、使っていない群よりも統計学的に有意に高い、となりますと、「問題を引き起こす」とされ、そうでなければ「問題を引き起こすとはいえない」とされるのですが…。
「問題を引き起こすとはいえない」のレベルから、「問題を引き起こさない、安全である」と言い切るに至るにはかなりハードルが高く、さらに症例、データの蓄積が必要です。なので、吸入ステロイドの中では比較的古くからあり、海外データの豊富なブデソニド(パルミコート)だけがFDAカテゴリーB(妊婦さんに使ってもまず安全)に入っているわけです。
じゃあ、他の吸入ステロイドや合剤(FDAカテゴリーC=Bのワンランク下)はダメなのか…?
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2011年11月24日
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