2011年11月29日

今日の症例・喘息治療と妊娠・出産・授乳6

30歳代、小児喘息持ち越し患者さん、児は5ヶ月で、授乳中。
入院後、シムビコート、キプレス、アレジオンを内服しておられる、という方です。


授乳に関しては妊娠よりも判断が難しい面があります。

妊娠の場合、催奇形性という判断材料がありますが、授乳の場合、乳汁移行という問題と、児が乳汁とともにその薬剤を摂取したときの安全性・危険性という側面があるからです。


おおまかにいうと、吸入薬はやはり吸収される量が少ない、ということで、乳汁中に出る量も微量ということはいえます。妊娠の時と同じく、安全、とお墨付きがあるのはパルミコートですが、その他の薬剤に関しても有益性投与となっていて、まあ使っても良さそうです。


問題は内服薬です。吸入薬よりは多く乳汁中へ移行すると想定されるわけですが、児への影響なども勘案し、添付文書上は…



キプレスは慎重投与となっています。

理由として、動物実験で乳汁中への移行が報告されているから、ということです。それでは、児がキプレスを(乳汁経由で)摂取するとどうなるか。


小児への投与は、1歳以上で可能であり、1歳〜6歳は1日4mg、となっています。1歳以上であれば安全性が確立しています。とすると、お母さんの内服量が1日10mgなので、まずは安全そうです。


問題は1歳未満の場合です。1歳未満の乳児、新生児、低出産体重児に対する安全性は確立していない、とのことです。そういうことを踏まえての「慎重投与」となるわけです。



一方、アレジオンは「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けてください」となっています。


キプレス同様、動物実験で乳汁中への移行が報告されている、ということで、乳汁経由で児が摂取した場合、3歳未満の児に対する安全性は確立していない。よって、キプレスよりも強めの表現になっています。


妊娠と違って、授乳は、特に男性の医師にとっては、「止めてください」とか、「しばらく止めてください」と言いやすいので、こんな表現になるのでしょうかね。




4児を母乳で育てているのを隣で見ていただけではありますが、個人的には、授乳を止めるというのは、こちらが思っているほど、そうそう気軽にできるものではないと思うんですけどね…。


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posted by 長尾大志 at 18:13 | Comment(0) | web喘息講座
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