2011年12月08日

低酸素血症の鑑別2・A-aDO2が開大する状況とは

さて、それでようやく本題です。

肺胞にきちんと酸素が入っているのに、動脈血に酸素が入らない状態。


PAO2がPaO2に反映されない状態。

これを、A-aDO2が開大する状況といいます。


どういうときにそうなるか。


ここの説明で、VAだのQだの不均等だのシャントだの、訳のわからない用語が山ほど出てきて混乱に陥り、呼吸器が嫌いになる…というのがおきまりのパターン。


皆さんが呼吸器嫌いにならないように(笑)なんとか理解してもらえるよう、できるだけのことをしてみたいと思います。


基本的には、A-aDO2が開大する、つまり、肺胞には酸素が入っているのに、動脈血に酸素が行かない状態になるのは、


■ 換気がうまくいっていないところがある

または、

■ 換気はうまくいっているんだけれども、血流に問題がある

か、のどちらかです。
これはわかりますね。




■ 換気がうまくいっていないところがある
とはどういうことか。


肺胞がつぶれるような病気では、病変部の肺胞がつぶれたり、水浸しになったりします。すると、その部分は換気がなくなるものの、血流はそのままです

一方健常な部分はそのまま。病変部の分も空気が入ってくることもありますが、酸素の割合が増えるわけではなく、健常部でのガス交換はこれまで通りです。


T型呼吸不全.pdf


の図の通り、PaO2が低下し、低酸素血症になります。



■ 換気はうまくいっているんだけれども、血流に問題がある
とはどういうことか。


肺胞はそのまま、肺胞に入ってくる空気や酸素もそのまま。だけどそこの血流がない、そんな状態では、病変部ではガス交換ができません。


血流がない場合.jpg


の図の通り、健常部でのガス交換がこれまで通りであっても、PaO2は低下し、低酸素血症になります。


明日以降はこれらの事項について、一つ一つ詳しく見ていきます。


A-aDO2のややこしい話を最初から読む

トップページへ

posted by 長尾大志 at 12:30 | Comment(3) | A-aDO2のややこしい話
この記事へのコメント
はじめして。現在医学部4年の者ですが、初学者にも大変わかりやすい記事で、いつも興味深く読ませて頂いております。ひとつわからない点があるので質問させて頂きたいと思います。

本記事に「A-aDO2が開大する状況とは、肺胞にきちんと酸素が入っているのに、動脈血に酸素が入らない状態。その原因のひとつとして、換気がうまくいっていないところがある。肺胞がつぶれるような病気では、病変部の肺胞がつぶれたり、水浸しになったりします。すると、その部分は換気がなくなる。」とあります。

もし、肺胞がつぶれて換気がうまくいかなくなれば、肺胞に酸素が行かなくなり、肺胞気酸素分圧(PAO2)が低下するために、A-aDO2は開大しないような気がします。

恐らく、肺胞がつぶれて換気がうまくいかなくなっても、実際はPAO2が低下しないために、A-aDO2が開大するのではと思いますが、そのメカニズムはどのようなものなのでしょうか?

ご教授して頂けると、大変うれしく思います。
Posted by 佐藤 at 2015年03月30日 18:17
そうです。大変よく受けるご質問で、ここが記事では上手く説明できていないな、と感じています。近々新しい記事では書き直したいと思います。

実際の肺では肺胞が3億もありまして、各々いろいろな状況にあるわけです。キッチリあいているものもあれば、つぶれているものもある…全てがつぶれては生きていけません。病気になるといくらかの肺胞がつぶれまして、そこには空気が入らないということであれば、その場所のPAO2を考える必要はないということになりまして、PAO2はあいている肺胞において考える、ということにしているのです。
Posted by 長尾 大志 at 2015年03月31日 12:20
お忙しい中、ご教示ありがとうございました。
「PAO2は開いている肺胞のみで考えること」大変勉強になりました。今後の紹介記事も楽しみにしております。
Posted by 佐藤 at 2015年04月02日 01:00
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。