NHCAP(nursing and healthcare-associated pneumonia)のガイドラインの作成に携わられた、大阪大学感染制御部の朝野先生がお話しされるということで聞いて参りました。いろいろと刺激的なお話が多かったのですが、随分時間が経って忘れかけています。備忘のため、いくつかの項目を書いていきましょう。
まずはいわゆる「原因菌」について。
なお、肺炎を起こしている原因となる菌について、起因菌、起炎菌などの言い方もあるのですが、この項では本邦の肺炎ガイドラインの表記に従って「原因菌」と表記します。
実臨床の場で肺炎の起炎菌が同定できることは少ない、ということはこれまでにも言われています。どうやらこれまで「原因菌」と言っていたものの中にも、本当に原因菌かどうか、疑問に思われるものがあるようです。
その代表が「MRSA肺炎」。
MRSAによる肺膿瘍や膿胸など、組織障害性の病変はあれども、普通の肺炎の表現型でMRSAが原因菌であることは、感染症の専門家としては考えられない、とおっしゃいます。
痰からMRSAが出ても、保菌しているだけなのでは?LZDとVCMの比較試験は意味がないのでは?などと問題提起をされました。
検出された菌が原因菌として明らかな意味があるのは…
- 市中肺炎で、喀痰などから肺炎球菌が有意菌数分離されたとき
- H.influenzae(元々肺には居ない)が有意菌数分離されたとき
- レジオネラやマイコプラズマが分離されたとき
- 空洞や壊死を伴う膿瘍様病変からMSSAやMRSAが分離されたとき
ぐらいだそうです。
もちろん、だからといってグラム染色の意義を否定されるものではありませんが、特に昨今の流行である「MRSA肺炎」「カンジダ肺炎」に注意を喚起されておられました。
その後はNHCAPのガイドラインのお話。
上に書いたようなお考えもあり、ガイドラインでは原因(分離)菌、と表記されたりもしていて、作成委員の先生方のこだわりが感じられます。つまり、分離されただけでは原因菌といえない、というメッセージが含まれているわけです。
ガイドラインのお話も結構衝撃的・刺激的なお話でした。明日以降、NHCAPガイドラインの話の中で取り上げさせていただきます。