2012年01月09日

医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドライン4・市中でも院内でもない場所…

このようにこれまでは、市中肺炎と院内肺炎という2つのくくりでうまくいっていたのですが、最近この2つの分類には当てはまらない症例が増えてきました。


これまでの分類では市中肺炎に含まれるけれども、耐性菌が増え、市中肺炎ガイドライン通りの治療では効かなくなってきた、そういうある一定の患者群が明らかになってきたのです。
そういう患者さんは病院に入院していないからといって、市中(自宅)におられるとは限らず、施設や療養型病棟におられるようなことが多かったわけです。


また、高齢化を背景として、誤嚥性肺炎が増加し、その対応が必要となってきました。

そういう、施設にいる人たちで、市中肺炎とは予後も耐性菌のリスクも異なり院内肺炎に近い群があることから、市中肺炎と院内肺炎の間の概念として区別されるようになってきました。


米国では2005年にNursing homeなどの施設にいる人たちの肺炎として、医療ケア関連肺炎(HCAP:healthcare-associated pneumonia)ガイドラインが生まれたのです。


それにならって、日本でも市中肺炎、院内肺炎に引き続く、第3の概念を形作る必要が出てきました。


米国では入院といえば急性期だけで、医療ケア関連肺炎(HCAP)の発症場所は日本の慢性期病棟入院(米国にはない)も含める感じになっています。
日本ではその概念をそのままは適用できないため、実情に併せてもうちょっと広く、慢性期病棟入院を含む医療・介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)という概念ができたのです。



その定義は、

  • 長期療養病床または介護施設に入所

  • 90日以内に病院を退院した

  • 介護*を必要とする高齢者、身体障害者

  • 通院にて継続的に血管内治療*を受けている


  *介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
  *血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など


です。背景としていろいろなことを検討されていて、これが結構勉強になりますので、ご興味のある方は是非ガイドラインを一読ください。


かくいう私も、「また、同じようなガイドラインを作って…混乱するだけじゃないの?」と当初はガイドラインの制定に疑問を持っていました。でも、読んでみるとこれが結構奥深い。非専門の先生方が読まれることはまず無いでしょうが、若い先生は抗菌薬や感染症治療のスタンスを学ぶことができ、おすすめです。


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posted by 長尾大志 at 11:48 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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