- 肺炎は抗菌薬で治療する。
- 重症肺炎はより強力な抗菌薬で治療する。
- 死にそうなほどの肺炎はICU、人工呼吸を併用する…。
…果たして、それでいいのでしょうか?という疑問を投げかけているのです。
「重症」な肺炎患者さんには、いわゆる予後不良の肺炎、末期の肺炎、すなわち、他疾患や老衰で宿主の生命機能が著しく不可逆的に損なわれた状態の肺炎が含まれます。
また、ADLが極度に悪化し、慢性的に誤嚥を繰り返しているような患者さんも含まれることになります。
このような「治る見込みのない」肺炎患者さんに機械的に強力な治療を行うことが、患者さんにとって最善なのでしょうか?
初期研修では、看取りも経験すべきのところで書きましたが、医療者には「正しく別れを告げていただく」という役割もあるのです。
救急・ICU領域の考え方では「死」は敗北、ととらえられがちであり、なんとしてでも心臓を動かし、肺に呼吸をさせる、ということが日常的に行われていますが、それは若い患者さん、予備力のある患者さん、ADLの保たれている患者さんの場合と、そうでない方の場合で、状況は異なるように思います。
老衰の果てに生じた、人生の終末状態としての肺炎を、きつい抗生剤や、人工呼吸器をはじめとするいろいろな管をつっこまれて、長らえていただくことが、患者さんにとって「最善」であるのか、ということをよく考えましょう、ということです。
一般的にもこのあたりの考え方が少し変化してきているようで、「一切の延命処置不要」と表明される方も増えてきているようです。
医師の側にも、これまでの「治してナンボ」から、「治らない病気」「治らない病態」に対し、どう向き合うか、という態度が問われはじめているのです。
そこでこのガイドラインでは、施設などにいる(老衰、寿命の)患者さんが、肺炎になったからといって(人工呼吸を含む)強力な治療を行うべきなのかどうか。医療に対する倫理観、患者さんや家族との関係も重視し、ガイドラインを参考に、主治医が倫理的に考え治療すべきである、と明記されています。
いわば、肺炎のターミナルケアを、いかに行うか。
ガイドラインにそのような事項を明記するのは、やはりこうしたことが社会的にも大きな関心事となっているからでしょう。また、ガイドラインというのが、良くも悪くも、大きな影響を持つ、ということも考慮されてのことだと思います。
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