2012年03月08日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態4

まあ、タイトルに「肺炎のイロハ」って書いちゃってますから、診断に悩むことはないと思うのですが。


基礎に糖尿病(経口血糖降下薬使用)、胃潰瘍のある喫煙者に生じた比較的急性の病態です。

糖尿病ですから、コントロールの具合にもよりますが若干の免疫低下はありそうです。喫煙者でもあり、感染リスクはある。重症COPDを思わせる、胸鎖乳突筋の発達や吸気時鎖骨上窩の陥凹はありませんが、線毛機能低下ぐらいはありそうですね。


急性に発症した、咳、発熱、低酸素血症。身体所見では呼吸数の増加と吸気時coarse crackles(+)、呼気終末時wheeze(+)。胸部レントゲンで浸潤影、炎症所見(白血球、CRPなど)高値、ということですから、「肺炎」という診断は間違いないでしょう。


急性発症で、急性肺炎、自宅での発症なので、市中肺炎、これもよろしいかと思います。


症状はマスクされているかもしれませんが、悪寒戦慄はなく、呼吸数からも重症感はなさそうです。自覚的に少し改善、というところも良いNewsですね。


それでは、市中肺炎ガイドラインの復習、というか、以前時間や大人の都合で書けなかったことを盛り込みつつ、実際の診断、治療過程を見て参りましょう。



市中肺炎と診断した、まず、どうしますか。



そう、重症度の判定をします。


A-DROPという語呂合わせ?で、重症度を評価します。これらの5項目は、いずれも市中肺炎の予後予測因子。各項目、当てはまると1点入ります。

A:Age(年齢) 男性≧70歳、女性≧75歳
D:Dehydration(脱水) BUN≧21または脱水
R:Respiration(呼吸)SpO2≦90%
O:Orientation(意識障害)
P:Pressure(血圧) 収縮期≦90mmHg

合計得点が何点かで、入院適応が決まります。

0点:軽症→外来治療可
1-2点:中等症→外来、または入院治療
3点以上:重症→入院治療
4点以上→ICU

ちなみに米国感染症学会(IDSA)のガイドラインはスコア計算が複雑で、非専門医にはハードルが高い、ということで日本呼吸器学会のガイドラインでは導入が見送られ、より簡素なCURB-65に準拠して設定されたものです。

CURB-65で使われている呼吸数≧30をSpO2 に置き換えています。まあ日本ではこれまで、呼吸数は軽視されてたんですねー。


この症例においては、A-DROPはDのみ当てはまり1点であったものの、食事・水分摂取が不良であったため、入院加療とされました。


さて、それではいよいよ、原因菌の推定です。


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posted by 長尾大志 at 12:44 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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