2012年03月09日

肺炎のイロハ・基礎疾患のある患者に発症した、急性経過の病態5・原因菌の推定

原因菌の推定です。


まずは病歴と身体所見から。

比較的急性発症ですが、突然の悪寒戦慄や、急な高熱などはありません。

基礎疾患としては、糖尿病と喫煙歴です。重症ではないにしてもCOPDもあるかもしれません。意識を失うほどの深酒はなさそう。


身体所見では、それほどの高熱でなく、全肺野で吸気時coarse crackles(+)が聴取されます。



市中肺炎でよくあるのは、肺炎球菌、マイコプラズマ、クラミドフィラ、H.influenzae、などなど、となります。


ガイドラインでまずは細菌と、主にマイコプラズマを鑑別する項目として、以下の6項目がありますが…


細菌ぽい項目 非細菌ぽい項目

高齢者           若年者(<60歳)
基礎疾患あり        基礎疾患なし
痰が多い          痰が少ない
ラ音が聴かれる       ラ音が聴かれない
空咳が少ない        空咳が多い
白血球が増える(≧1万)  白血球が増えない


高齢で基礎疾患があり、ラ音が聞かれて空咳が著明でない、とすると、これは細菌ぽい、ということになるでしょう。


また、喫煙歴(+COPD)と、比較的緩徐な発症から、細菌がいるとすると、ひょっとするとH.influenzae、あたりをイメージされるでしょうか。



次に検査所見を見てみますと、WBC 17,400>1万です。上記の病歴・所見と合わせると、マイコプラズマはあまり考える必要がなさそうです。


そして、胸部レントゲン。


120221CR1.jpg


大葉性肺炎というよりは、多発する班状影で、いかにも肺炎球菌、という感じではなさそう。

肺炎球菌尿中抗原も陰性です(だからといって、すぐに否定はできかねますが)。



そして、喀痰からHaemophilus属を検出した、となりますと…。
いよいよ、抗菌薬の選択です。


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posted by 長尾大志 at 10:14 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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