2012年07月12日

医師国家試験過去問(呼吸器系)つまずきポイント徹底解説・closing volume(とclosing capacity)の測定方法2

まず、最大呼気位まで息を吐きます。息を呼出したときには、肺底部の肺胞は肺自らの重みのため、ぺちゃんこになっていて、肺尖部の肺胞には空気が残っています。次に、純酸素(100%O2)を最大吸気位まで吸入します。すると、容量変化の大きな肺底部に多くのO2が流入します。


5容量変化の大きな肺底部に多くのO2が流入.JPG


そのため、この最大吸気位での時点では肺尖部のN2濃度が高く、肺底部はO2濃度が高い(N2濃度が低い)、ということになります。


その後呼出し、口元で呼気中N2(窒素)濃度を測定すると、まず気管内にある100%O2が出てきます。


6まず気管内の100%O2 が出てくる.JPG


つまり、単一呼出曲線でいうと、出だしのN2=0%の相は、気管の中にあった100%O2が出てきている相になります。


7単一呼出曲線の出だしの相(第1相).JPG


息を吐き続けていると、やがてもう少し末梢の気管支内に含まれる100%O2と、早いところでは肺胞領域の中のガスが混合されて出てきます。肺胞領域の中では、まず(重みでつぶれてくる)肺底部から呼気が出てきます。


8気管の次には、重みでつぶれる肺底部の肺胞からO2濃度の高いガスが出てくる.JPG


つまり、単一呼出曲線でいうと、出だしのN2=0%の相に引き続いて、気管支の100%O2と肺底部の酸素濃度の濃い(N2濃度の薄い)ガスの混合気が出て来る相になるのです。この段階になるとN2濃度は0%から跳ね上がります。


9単一呼出曲線の第2相.JPG


その後は肺底部の比較的O2濃度が高めのガスが呼出されます(第3相)。この相においては、徐々にN2濃度はほぼ横ばいです。とはいえ、肺底部から、徐々に上方の肺胞(O2濃度が少しずつ低下する)のガスが出てくるようになり、N2濃度が徐々に上がってきます。


10肺底部から、徐々に上方の肺胞のガスが出てくるようになり、N2濃度が徐々に上がる.JPG


そのため単一呼出曲線においても、ほぼN2濃度がプラトーになりつつじわじわ上昇する、そんな第3相が見られるのです。


11単一呼出曲線の第3相.JPG


その後も呼出し続けて呼気の終わりの方になってくると、とうとう肺底部からのガスが出尽くして呼出が止まりはじめ、肺尖部の肺胞内ガスが出始めます。肺底部からのガスが出尽くす、そのタイミングは(肺底部の)末梢気道が閉塞するタイミング、と考えられ、そのタイミングから息を吐ききるまでに呼出した量を閉塞しかける肺気量(=クロージングボリュームclosing volume, CV)と呼ぶのです。


12肺底部の末梢気道閉塞により、肺尖部からの(N2濃度の高い)ガスが出始める.JPG


肺底部の気道が閉塞すると、肺の上の方、つまりN2濃度の高い(O2濃度の低い)ところのガスが出てきますので、呼気のN2濃度が急激に高くなってくるのです(第4相)。


13単一呼出曲線の第4相.JPG


この第3相から第4相に切り替わってから後の呼出量(肺気量)をクロージングボリュームとしています。クロージングボリュームは末梢気道障害を反映します。末梢気道障害が起こると肺底部の気道閉塞(クロージング)のタイミングが早くなり、クロージングボリュームが増加することになります。


クロージングボリュームが若い健常者であれば肺活量の10%程度です。これが20〜25%以上になれば末梢気道障害があり、換気障害が低酸素血症の原因となりうるといわれています。


ただコトが単純でないのは、クロージングボリュームは加齢に伴って増加が見られる、ということです。65歳頃もなると、実に肺活量の40%に達するとされています。ですから、単純なカットオフ値というものはなく、単一呼出曲線のグラフやその他の指標を見て総合的に判断する、ということになります。


なお、クロージングボリュームに、息を吐ききったときに肺内に残っている空気の量=残気量を加えたものをクロージングキャパシティー(closing capacity:CC)といいます。


14クロージングキャパシティー.jpg


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この記事へのコメント
長尾大志先生

検査技師です。CVのご説明をありがとうございました!!こんなに親切に解り易く書いてくださる方に巡り合い今日はなんてLukyなんでしょうか!ありがとうございました。よろしければ、呼吸性、代謝性アシドーシスまた、呼吸性、代謝性アシドーシスについても解り易く教えてください。
Posted by えのむら at 2012年08月01日 17:32
コメントをありがとうございます。

アシドーシス、アルカローシスについてですね。了解です。胸部画像が一段落したら取り上げますね。
Posted by 長尾大志 at 2012年08月01日 19:32
初めまして。いつも勉強させてもらっています。今回のクロージングボリュームは特に勉強になりました。ここまでわかりやすく書いている書物もHPも他にはありませんので感銘いたしました。
もしよろしければご教授いただきたいのですが、ご経験上でこういった1,2,3,4相の特徴的な波形はやはり深呼吸のときのみなのでしょうか?それとも通常の呼吸でも起こり得ているものでしょうか?
Posted by りょう at 2012年08月07日 19:17
通常の呼吸、といいますと、TVレベルでの呼吸ということでしょうか。

そのレベルの呼吸では、換気は主に上の方の肺野で行われていますから、肺内での窒素濃度にはそれほど勾配が生じないことになるでしょう。

とすると、理論的には3相から4相への移行は深呼吸の時のみかと思いますが、経験上通常の呼吸で呼気N2濃度を測定したことがありませんので、そこは何とも申せません。
Posted by 長尾 大志 at 2012年08月10日 12:19
長尾先生、ご返事をありがとうございました。おっしゃるようにTVレベルのことでありました。大変参考になります。
追加の質問で恐縮ですが、仰臥位でも同様の波形が描かれるものでしょうか?
(私自身は人工呼吸中のガスの動きについて調べておりまして、今回の記事の内容が新しい研究のヒントになるために、いろいろとお聞きしております。よろしくお願いします。)
Posted by りょう at 2012年08月11日 10:05
仰臥位ではどうなるか、私はやってみたことがありませんので、経験からどうなるか、申し上げることができません。

りょうさんが上の記事をお読みになって理解していただけたのであれば、ましてやその分野の研究をしておいでであれば、理論上どうなるかはすぐにおわかりかと思います。

他の読者の方々の参考にもなるかと思いますので、是非ご自分で実験いただき、実際にはどうなるか、結果を教えていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
Posted by 長尾 大志 at 2012年08月13日 00:14
はじめまして。クロージングボリュームについて検索していたら、こんなに素敵なページにたどり着きました^^
とてもわかりやすかったです!

長尾大志先生のように学生の教育に力を入れてらっしゃる先生がいる大学の学生は幸せだなと思いました^^
Posted by 某バカ大学医学生 at 2012年11月29日 00:22
コメントありがとうございます。そう言っていただけると、本当に励みになります。これからも頑張ります!
Posted by 長尾 大志 at 2012年11月29日 23:26
こんにちは、滋賀医科大学のものです。
ヤフーで検索していたところ、長尾先生のサイトに辿り着きました。
すごく分かりやすかったです。
ありがとうございました!
Posted by yuki at 2012年12月19日 14:57
それは何よりです。またわからないことがありましたら遠慮なく質問してください。
Posted by 長尾 大志 at 2012年12月19日 16:42
失礼いたします。
クロージングボリュームは、先生のご指摘のところではなく、ご指摘のボリュームからRVまでのボリュームまでではないでしょうか?
Posted by nao at 2014年02月15日 12:51
ご指摘、ありがとうございました。図もおかしかったです。また、タイトルにCCの表記があるのに本文で書いていませんでした。いずれも修正させていただきました。
Posted by 長尾 大志 at 2014年02月17日 10:22
公立陶生、生理検査佐藤と申します
大変わかりやすい解説ありがとうございます、
本日依頼で凾m2が15%、手技には問題なかったです、第4相確認できず、
モストグラフ5Hz、raw では細気管支の評価は無理でした、肺尖部の残存N2が多すぎという理解でよろしいでしょうか?
Posted by 佐藤 君夫 at 2014年04月09日 23:07
よくわかりませんが、疾患肺では気道抵抗や肺コンプライアンスが不均等に存在しますから、N2分布も不均等になったのかもしれません…。
Posted by 長尾 大志 at 2014年04月10日 18:19
看護師6年目、現在仕事の傍ら母校で外部講師として呼吸器看護学援助論を講義しているものです。
今回、CVについてテキストでは不十分(自分もなかなか理解が得られず)、検査方法など理解得られやすい説明はないかと探しあぐねた結果辿り着きました。
とても解りやすい解説ありがとう御座います。
可能ならば、この内容(主に画像)を使わせていただきたいのですが、ご許可検討をよろしくお願い致します。
Posted by makoto nagamori at 2014年09月07日 13:56
お役に立ってよかったです。講義スライドなどにお使い頂くのは問題ありません。どうぞお使いください。
今後呼吸生理の本を、ここにある画像を使って出版予定ですので、その前にご自身の出版に使われるのは、出来ればご遠慮頂けますと幸いです。出版後でしたら普通の手続きで引用、ご利用頂けます。
Posted by 長尾 大志 at 2014年09月08日 15:44
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