100B-30
前胸壁に下行性の静脈怒張を認めるのはどれか。すべて選べ。
a 肝硬変 b 肺血栓塞栓症 c 上大静脈症候群 d Budd-Chiari症候群 e 骨盤内深部静脈血栓症
身体所見の重要性はいうまでもありませんが、身体所見から得られる情報は、論理的に考えていくことで得られます。今後こういう問題が解けるようにポリクリ、臨床実習でも、ボーッと所見をとるのではなく、論理的に考えながらやるように心がけたいものです。
胸壁、あるいは腹壁に静脈怒張があった場合、その意味するところはどういうことか。機序を理解しておくと、身体所見から論理的に鑑別が導かれるわけです。
まず言葉の定義。胸壁に静脈怒張がある、というのはこういうことです。これはわかるでしょう。
胸壁に下行性の静脈怒張、ということは、怒張した静脈内を流れる血流が、下向きであるということ。
ちなみに下行性であるかどうか確認するには、
怒張静脈の上部と下部に指をおいて、間の血管がcollapseした後にどちらか一方を離してみるとわかります。
それでは、選択肢について考えましょう。
- a 肝硬変×:肝硬変では門脈圧が上昇し、本来門脈を通過するはずの血流が臍傍静脈を通って腹壁静脈に逃げる、いわゆる「メズサの頭」所見を呈します。これは臍傍静脈を中心に放射状に流れるものですから、臍より上に行く静脈では上行性の怒張となるはずです。
- b 肺血栓塞栓症×:肺血栓塞栓症では肺動脈に血栓、塞栓がつまります。静脈系には影響を来しません。
- c 上大静脈症候群○:上大静脈が圧迫を受けたり閉塞したりすることで、上大静脈を通って右房に還るべき血流が、上大静脈を通れずに皮静脈経由で下へ流れます。つまり、下行性静脈怒張を来します。
- d Budd-Chiari症候群×:門脈圧亢進症です。
- e 骨盤内深部静脈血栓症×:骨盤内の腸骨静脈などに起こる血栓ですので、下肢の浮腫や発赤主張、疼痛が主症状です。皮静脈の怒張は下肢に、上行性に生じます。
上大静脈症候群の機序を図にしました。
これで一段落つきましたので、いったん医師国家試験過去問から離れようと思います。
質問は随時受け付けますので、ご遠慮なくどうぞ。
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