過去問を解いてみましょう。
84D-18
64歳の男性。38年前に肺結核で右側胸郭形成術を受けた。5年前から労作時息切れが出現し来院。(中略。チアノーゼや右心不全所見あり)血清生化学所見:尿素窒素17mg/dl、Na 136mEq/l、Cl 92mEq/l、%VC 42%、1秒率63%。
動脈血ガス分析:pH 7.27、PaO2 48Torr、PaCO2 67Torr、HCO3- 28mEq/l。
胸部X線写真:胸郭形成後と透過性の亢進
この患者の状態で誤っているのはどれか。
a 代償性呼吸性アシドーシス b 混合性換気障害 c 肺胞低換気 d 静脈混合率上昇 e 肺高血圧
早速動脈血ガス分析の評価をしてみましょう。
pH 7.27、すなわちpH<7.350のアシデミアですね。
アシデミアの理由は呼吸性か代謝性か。
PaCO2 67Torrであるため、呼吸性アシドーシスがあります。
HCO3- 28mEq/lで、これは代謝性アルカローシス。
この2つの病態が共存して、その結果のアシデミア…ということは、まず呼吸性アシドーシスがあり、代謝性アルカローシスによる代償機転が働いている、と考えるとつじつまが合いますね。
呼吸性アシドーシスの原因は、胸郭形成術によって肺容量が減少したことと、おそらく存在する肺気腫によって%VCが42%と低下し拘束性障害を来していますので、肺胞低換気があると考えられます。
PaO2 48Torrであることも肺胞低換気で説明可能です。
こんな感じで、実際の症例にあたってみましょう。
ちなみに、選択肢についても考えておきます。
- a 代償性呼吸性アシドーシス:代償しているのは代謝の方です。
- b 混合性換気障害:%VCの低下と1秒量の低下、いずれも見られ、混合性の換気障害であります。
- c 肺胞低換気:上にも書きましたとおり、肺胞低換気状態と考えられます。
- d 静脈混合率上昇:これ、シャント率のことですね。換気していないところの静脈血が換気してせっかくきれいな動脈血になったものに混じってしまい、PaO2が低下することをいいます。気腫性病変がありそうなので、これもありそうかと。
- e 肺高血圧:右心不全所見から、肺高血圧もありそう、となります。
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「代償性」呼吸性アシドーシスの意味は、代償しているのが呼吸性アシドーシスという意味なのか、呼吸性アシドーシスを代償しているという意味なのかが分かりませんでした。
本問に関しては、代謝性アルカローシスが十分に代償できていないという点から選択肢aを消去したのですが、、
お忙しい中申し訳ありませんが、よろしくお願いします。