86D-4
15歳の男子。2ヶ月前から全身倦怠感があり、1ヶ月前から多飲と多尿とが出現した。2週間前から悪心と嘔吐とを繰り返し、今朝から意識混濁を来たし救急車で搬送されてきた。脈拍96/分、呼吸数28/分、整。血糖736mg/dl、尿ケトン体3+。
この患者で予想される動脈血の所見はどれか。
pH PaCO2 HCO3- Na Cl
a 7.00 43 11 137 102
b 7.18 23 9 136 96
c 7.21 36 14 136 108
d 7.40 40 24 141 107
e 7.46 32 32 145 98
意識混濁、高血糖と尿ケトン体3+ということから、糖尿病性ケトアシドーシスの診断は問題ないと思います。代謝性アシドーシスの鑑別ということで、アニオンギャップ(AG)の計算も必要です。
覚えていますか?
AG=(Na+)−{(Cl-)+(HCO3-)}
(正常値12±2mmol/L)でした。
- a:アシデミアがあり、その理由としてHCO3-が低値、すなわち代謝性アシドーシスであります。AG=24と増大しており、AG増大する代謝性アシドーシスに矛盾しません。しかし、それでいてPaCO2が低下を示しておらず、呼吸性代償が働いていないのは話が合いませんね。
- b:アシデミアがあり、その理由としてHCO3-が低値、すなわち代謝性アシドーシスです。PaCO2が低下し、呼吸性代償が起こっています。AG=31と増大しており、すべて糖尿病性ケトアシドーシスに合致します。
- c:アシデミアがあり、その理由としてHCO3-が低値、代謝性アシドーシスです。しかしAG=14と正常範囲であり、糖尿病性ケトアシドーシスに合致しません。
- dとe:アシデミアではありません。HCO3-低値でもないし。
練習できましたか?酸塩基平衡については、このあたりでいったん〆としておきましょう。
ここでお知らせです。
毎日更新が原則のこのブログですが、明日以降、ネット環境に接続できず、どうしても更新することができないと予想されます(夏休みともいう)。毎日楽しみに?ご覧頂いている方が万一おられましたら、申し訳ございませんが、再開をしばしお待ちください。
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