「肺炎とは肺実質の 急性の、感染性の、炎症である。」とされています。
多くの場合、原因となる微生物が鼻や口から気道を通って肺に進入し、線毛やマクロファージによるお掃除機構をかいくぐって増殖、それに対して防衛軍である好中球、リンパ球、マクロファージなどが局所に遊走してきまして、戦いが始まる。その戦いの場を「炎症」と呼びます。
戦いの場では白血球たちがどんどん参加できるよう、血管が拡張して局所の血流が増え、サイトカインなどにより血管透過性が亢進して、局所に浮腫が生じます。炎症のために局所が発赤・発熱・腫脹・疼痛などを呈するのはこのためです。
肺においては、この典型的な炎症像とは少し様相が異なります。なんてったって、肺は空気だらけの、スカスカの臓器。
血管透過性が亢進したら、肺胞腔内に「浸出液」があふれ出ます。そして戦いが進むにつれ、浸出液内に山ほど微生物、防衛軍の屍骸が累積する。これが「膿」です。膿の見た目が白く濁っていたことから、「白血球」の名がついたことはご存じでしょう。
病変は肺胞から肺胞へ、気道、Kohn孔を通して波及し、連続する病変が生じます。肺胞1個1個を拡大して見てみると…
こうやって連続性に肺胞が水浸しになることで、浸潤影が生じます。そうすると、換気が減少し、血流は保たれる、換気血流不均等が生じ、A-aDO2の開大、低酸素血症→呼吸困難、頻呼吸が生じます。
そのたまった膿があふれ出してきたのが膿性痰、痰が気道にたまるとラ音が聴取される。そういうわけで、肺炎では、
- 咳、痰、発熱、呼吸困難→低酸素血症、頻呼吸
- 聴診上ラ音
- 胸部レントゲンで陰影(特に浸潤影)
- 炎症所見(白血球、CRPなど)高値
などの症状、所見が見られるわけです。
肺炎の治療としては細菌が原因であれば、抗菌薬を使いましょう、ということになります。
ある抗菌薬がどの菌に効くかを表したものがスペクトルで、これはどこにでも載っているものですが、それとは別に「耐性」の問題があります。
いくつかの菌においては、スペクトルではカバーされていても、耐性のためにその抗菌薬の効果に疑問がある、という事態があり得るのです。
そういうことも含めて、できる限り日本での肺炎診療、つまり抗菌薬使用を標準化しましょう、というところでガイドラインができたのです。
ガイドラインには、市中肺炎、院内肺炎、医療・介護関連肺炎の3つがあります。これは、発症した場によって、肺炎の原因となる微生物が異なる、ということと、その場にいる患者さんの状態が異なる、ということで、分けて考えるのが合理的であるからそうなったわけですが、根底に流れる考え方は皆同じです。
つまり、患者さんのいた場、患者さんの状態から、原因微生物を推定し、適切な抗菌薬を使用する、この流れは共通なのです。3つのガイドラインを読むのは大変だ…ということでなかなか読めない(私も含めて)皆さんと、ガイドラインの根底にある考え方を紐解いていきましょう。
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