2012年09月05日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」2〜菌をもらった場所

肺には、常在菌というべきものはほとんどおらず、通常は無菌状態です。肺炎となるためには、菌がどこかからやってこなくてはなりません。


通常菌が入ってくる経路は鼻や口から気管〜気管支を通じて、となるわけですが、そもそも鼻や口に入ってくるためには、@菌が飛沫(しぶき)のようになって、鼻や口の近くを浮遊しているか、A元々鼻腔や口腔内に(常在菌として)住んでいるか、どちらかの状態である必要があるでしょう。


いわゆる伝染、伝搬、ということを考えますと、@他人が喀出した「咳」「痰」「しぶき」を(エアロゾル、飛沫のまま)吸い込む、という経路が順当です。


しかし、ADLの低下した患者さんや脳血管障害などのある患者さんのように、嚥下障害がありますと、A医療関係者、介護者、患者さん自身、家族などの手指についた菌が患者さんの口腔内に定着し、それを誤嚥する、という経路もあり得るわけです。この場合は接触による伝搬、ということになります。



健康な人が普通に生活をしていて肺炎になる、というケースでは、@のパターンがほとんどです。すなわち、元気な人、若い人は、保育園、幼稚園、学校、会社、人混みなどで、他人が喀出した「咳」「痰」「しぶき」を吸い込むことで感染が成立する。


一方で、入院中の方、介護を受けているような方ではAのパターンが増えてくる。@のパターンであっても、周囲にいる「他人」も、やはり入院や介護を受けているわけで、他人が喀出した「咳」「痰」「しぶき」の中にいる菌は、元気な人とは違ってきます。


このように、おのおのの「場」にいる菌、そして患者さん(宿主)の状況が異なるために、肺炎の(想定される)原因菌、さらには使用すべき抗菌薬が異なってくるわけです。


そんなわけで、健康な人が普通に暮らす市中で発症した肺炎=市中肺炎、病気で入院中に発症した肺炎=院内肺炎、入院までは行かないけれど、病院によく顔を出す、あるいは介護を受けている人向けの医療・介護関連肺炎と、3つもガイドラインができてしまったのでした。


肺炎ガイドラインを最初から読む

トップページへ

posted by 長尾大志 at 19:39 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。