ブランクについて、もう少し考察しましょう(今日が本題?)。
医学生の皆さんや臨床研修を行っておられる皆さんは、ほとんどの方がまずは臨床医としてのキャリアを積んでいかれると思いますが、その後ひょんなことから?臨床医としてのキャリアを中断されることもあるかもしれない。
たとえば、研究生活に入る、留学する。女性の方ではやはり出産、育児などでキャリアが途切れることもあるかもしれない。
その際に、どの程度のブランクが許容範囲なのか。
まあ、人それぞれといえばそれまでなのですが、私の感じている実感というものを、あくまで参考まで、ということではありますが、申し上げてみたいと思います。
私の場合、大学院生活は完全に臨床をやりながらで、研修が済んでからのブランクはなかったのですが、それまでに基礎に行って研究を修められ、臨床に戻ってこられた先生方を10名ぐらい拝見し、上級医の意見を元に自分なりに得た結論は、「2年以上あくと、臨床の第一線ではキツイ」というものでした。
まあ、2年でギリギリかなと。
傍から見ていて、「立派な臨床医の方だな〜」と思える方は、ほとんどの方が臨床のキャリアを切らしておられない。
やっぱりね、キャリアが中断すると、どうしても勘が狂ってしまうんですよ。これは。そして、どうしても年を取って、「突き詰める気持ち」が薄れてくる。で、基礎的なところをアップデートする機会もなく、「よくわからんけど、まあいいや」で済ませてしまう。
そこを基礎からある程度やり直されて、踏ん張って突き詰めることで、ある程度カバーすることは可能でしょう。出産、育児から数年経過されて戻られて、頑張っておられる女性医師の方でも、しっかり臨床医されている方もおられます。でも、本当に、かなりの頑張りが必要だと思うのです。
一方基礎研究をされてどっぷり時間がたった方は、やはり臨床に戻られるとしんどそうです。
また逆に、基礎や留学なんかで研究をしようとすると、2年では全くモノにならない(言っちゃった…)わけで、2年で「合わない」と感じたら早めに引き上げ、やるんだったらもう徹底的にやってほしいと個人的には思っているんですね。
「最近では留学希望の若手医師が少ない、嘆かわしいことだ」という声を教授陣から聞くこともあります。確かに留学をすると、ものの見方が変わり、下手をすると人生が変わる、素晴らしい体験であることは確かなのですが、その間の(臨床医としての)ブランクは、教授陣が思っておられるほど軽いモノではない、と、敢えて申し上げておきます。
かくいう私は、幸か不幸か留学期間は2年。ブランクと引き替えに得たモノは推して知るべし…。
いつも楽しくブログを拝見しております。
2年でも相当きついわけですね・・・。
キャリアの途中で臨床を離れるなら、戻るときには一から研修医をやる覚悟でやれ、というお言葉を最近いただいたのですが、長尾先生のご意見とも一致しそうですね。
臨床研修制度開始以来、卒後教育はどんどん発展していますが、いろんな生き方を認めるように社会が変化する中、キャリア途中での再教育プログラムもニーズが増えてきそうですね。
あまり大きな声では言えませんが、自覚がある場合は意識して臨床に取り組むので、再教育プログラムはすごく意味があると思いますが、本当の問題は、そうでない場合なのですね…。
今の自分もそうならないよう、自戒を込めて書いておきます。
まさに、これから基礎研究に入らなければいけない身分の者です。2年で戻れる保証はありません。
みんながやるから、先輩方がみんなやってきたから、という安易な考えでおりましたが、先生の御見識・御意見を拝見し、すっかりブルーな気持ちになりました。
実際、基礎実験のメリットややるのが当然だ、と話される先生もいれば、臨床医の研究自体を徹底的に否定する先生もたくさんおられ、いろんな意見があり、何が本当なのか、実際自分で判断しにくい状態の人も多いと思います。
そんな中、若手の教育にご熱心な先生の御意見を拝見でき、大変参考になりました。
ありがとうございます。
臨床医が臨床を離れて研究をすること、そしてブランクについて、さらにもう少し突っ込んだ記事も期待しています。
もう少しつっこんだ記事…。あまり具体的に書くとちょっと問題がありますので、実はこの記事もほとんど書き直しました。参考になりそうな記事が書けたらまたupしますね。