肺炎球菌の耐性としては、ペニシリン感受性肺炎球菌(PSSP:penicillin sensitive Streptococcus pneumoniae)に対するペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP:penicillin resistant Streptococcus pneumoniae)というものがあります。さらに、その間のペニシリン低感受性(中等度耐性)肺炎球菌(PISP:penicillin intermediately resistant Streptococcus pneumoniae)というものも定義されています。
歴史的?経緯を書きますと、元々は、すべての感染症に対してPCGのMICによって下記のように耐性が定義されていたのですが、
- PSSP:MIC≦0.063
- PISP:0.125〜1
- PRSP:MIC≧2
2008年に、非経口ペニシリンを使用するにあたって、髄膜炎(PCGの移行が悪い)と肺炎その他の感染症は分けて、感受性の定義が変更されました。
髄膜炎の場合、
- PSSP:MIC≦0.06
- PRSP:MIC≧0.12
肺炎その他の感染症においては、
- PSSP:MIC≦2.0
- PISP:4.0
- PRSP:MIC≧8.0
となっています。
実のところ、世の中にいる肺炎球菌の多くはMIC=2の株なのですが、これが古い基準だとすべてPRSPに分類されてしまっていたのですね。そのため、「ペニシリン耐性肺炎球菌=ペニシリンが使えない」という都市伝説?が蔓延っていたのです。
しかし、この新しい定義によりますと、MIC=2の株はPSSPとなります。ギリギリ当落線上、ではありますが、ペニシリン系は投与量を増やせば感受性の低下に対応できる、ということで、肺炎球菌による肺炎治療の原則は、ペニシリン系抗菌薬の高用量投与が第一選択、と(ガイドラインでは)なっています。
基本的なガイドラインの考え方は、@患者さんを間違いなく治療する、A現在人類が手にしている抗菌薬という武器を、できる限り大切に使用し、次代まで使える状態で引き渡す、ということに尽きるかと思います。
そのためには比較的狭域で、古い(=安い)薬を、いかにうまく(使うべき場面で)使うか、ということですから、特にペニシリンをきちんと使う、ということが強調されているのです。
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