2012年09月13日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」8〜菌をもらった場所別の原因菌・入院している患者さん=院内肺炎

病院に入院している患者さんの状況を想像してみましょう。

そもそも入院しているということは、何か入院せざるを得ない理由があるはずです。手術をする(した)とか、副作用の大きな(免疫力を低下させるような)薬剤を使うとか、中等症以上の感染症とか、摂食困難とか、挿管チューブやカテーテルが挿入されているとか…。


ということは、患者さんはそれぞれ、ある種の菌が定着、あるいは侵入しやすい状況を持っておられる、ということになります。


そして、周りに浮かんでいる、あるいはそこらに定着している菌も、元気で家にいるときとは異なります。


病院の中には、元気でスタスタ歩き回って、肺炎球菌やマイコプラズマをまき散らす人は少ない(そういう人は入院しない)。


入院している患者さんから出てくるのは、1つは(割と広域なスペクトラムの)抗菌薬を使用されたことによって出てきて、そのあたりに定着した耐性菌、そしてもう1つはなんやかんやの分泌物やら排泄物やらの中に入って出てくる腸内細菌。両方の要素を持つものとして、有名な緑膿菌とMRSAがあります。


いずれにしても、出てきた菌が直接、または間接的に(一旦どこかに定着して)、別の患者さんに入り、肺炎を引き起こしたもの。これが院内肺炎です。


どこに定着するか。MRSAや腸球菌では医療者の手指が有名ですし、緑膿菌やセラチアなどでは水道の流しやネブライザー、加湿器、ボトルやチューブなど、水で濡れているところは怪しいようです。その他、リネンや患者さん自身、ご家族の手指や皮膚も。


そういうところから患者さんの鼻腔、口腔に定着し、いつの間にやら嚥下(誤嚥)され…いうルートが想定されているわけです。


ちなみに鼻腔、口腔には元気で家におられた頃からの肺炎球菌やインフルエンザ菌もいたりしますので、入院して間もない患者さんや、軽症の患者さんではそれらの菌も想定されます。


というわけで、院内肺炎、特に病院に長居されている、あるいはリスクの大きな(免疫低下のある)患者さんの肺炎、原因菌は腸内細菌のグラム陰性桿菌が主体。


問題は、緑膿菌、あるいはMRSAがいるかいないか、ということでしょう。


たとえば3世代セフェムを使うと菌交代で緑膿菌が残ります。広域抗生剤の長期投与はMRSAのリスクになりますし、そもそも抗菌薬を使うと、大なり小なり耐性がついてくるものなのです。


院内肺炎の原因菌はこのようにグラム陰性桿菌、さらには緑膿菌・MRSAをはじめとする耐性菌であることが多いため、エンピリック(経験的)治療はこれらがターゲットとなってきます。


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posted by 長尾大志 at 16:58 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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