2012年09月19日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」11〜菌をもらった場所別の原因菌・市中でも院内でもない場所…

肺炎の分類としては、元々菌をもらった場所によって入ってくる菌が違う、そういう考え方から市中肺炎(家やその辺でもらう)と院内肺炎(病院に入院していてもらう)という2つのくくりがまず考えられました。


しかし、その定義でいうと入院はしていないので院内肺炎ではないんだけれども、市中肺炎といえるまで元気でもない、そういう人たちが見えてきたのです。



入院はしていない。そこまで重症の基礎疾患は持っていない。

  • でも、抗菌薬を繰り返し使用するような病歴があって、耐性菌が常在しているリスクがある。

  • あるいは、ステロイド、免疫抑制薬、抗癌剤などの治療によって免疫力が低下している。

  • もしくは、介護を受けていて、介護者の手指を介して耐性菌を受け取ってしまう。

  • はたまた、カテーテルを出し入れする必要があり、その取り扱いの過程で医療関係者の手指に触れる。

  • そんな感じで口腔内(や皮膚、腸管内)の常在菌が耐性菌に入れ替わり、それを誤嚥してしまいがちである。



このような方々は耐性菌リスク、誤嚥のリスクが多く、治療や予後を考える上で、独立したグループとして考えて対応する必要がでてきました。


日本においても2011年、色々な議論の末に、市中、院内に次ぐ第3の概念、慢性期病棟入院を含む医療・介護関連肺炎(NHCAP:nursing and healthcare-associated pneumonia)という概念ができたのです。


その定義は、

  • 長期療養病床または介護施設に入所

  • 90日以内に病院を退院した

  • 介護*を必要とする高齢者、身体障害者

  • 通院にて継続的に血管内治療*を受けている


  *介護…身の回りのことしかできず日中の50%以上をベッドで過ごす
  *血管内治療…透析・抗菌薬・化学療法・免疫抑制薬など

です。おおよそ上に書いたようなことが網羅されているかと思います。


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posted by 長尾大志 at 16:59 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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