2012年09月25日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」15〜抗菌薬の種類と特徴3・ペニシリン系抗菌薬2・広域ペニシリン

PCGの構造を変更して、グラム陰性桿菌にも効くようにした、いわゆる広域ペニシリンという範疇に入るペニシリンには、緑膿菌に効くやつと効かないやつ、大きく分けて2種類あります。


現実的に日本で呼吸器領域の診療に使われるのは、ここのところですから、この2系統を覚えておきましょう。


■緑膿菌に効かない広域ペニシリン

  • アンピシリン(ABPC:ビクシリン)

  • アモキシシリン(AMPC:サワシリン)



グラム陽性球菌群(連鎖球菌、肺炎球菌)のPCGに加えて、グラム陰性桿菌のインフルエンザ菌に対するスペクトルを獲得しました。


てことは、多くの市中肺炎にはこれでOKか?スペクトラム的にはそうですね。
問題は耐性菌です。


肺炎球菌の耐性菌であるPRSPやPISPに対しては、肺炎の場合、よほどのこと(MIC≧4とか)でなければ、ペニシリンの増量で対応できるのでした。


ですので、市中肺炎の軽症例では、「ペニシリン経口、大量投与」が推奨されています。


インフルエンザ菌の耐性株はどうか。BLNAR(β-lactamase negative ampicillin resistant)は名前の中に「アンピシリン耐性」って入っているぐらいですから、効くわけがなさそうです。BLNAS(β-lactamase negative ampicillin sensitive)だったら問題なし。


また、βラクタマーゼを産生する菌には無効です。黄色ブドウ球菌、大腸菌やクレブシエラは産生するのでダメ。インフルエンザ菌だとBLPAR(β-lactamase positive ampicillin resistant)はアキマセン、ということです。これらに対しては、βラクタマーゼ阻害薬の助けが必要になります。



■緑膿菌に効く広域ペニシリン

ピペラシリン(PIPC:ペントシリン)


こちらは、広域ペニシリンでも果たせなかった、緑膿菌に対するスペクトラムを獲得した、超広域のペニシリンであります。当然、陰性桿菌であるインフルエンザ菌にも強い強い。


緑膿菌に効く、ということは、緑膿菌以外の感染症には使わない方がいい、ということであります。また、βラクタマーゼで分解されるので、βラクタマーゼを産生する菌にはやはり効き目がありません。ということで、βラクタマーゼ産生菌が増えている昨今では使いにくくなっています。


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posted by 長尾大志 at 18:10 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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