2012年09月28日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」18〜抗菌薬の種類と特徴6・セフェム系抗菌薬2・第1世代セフェム

第1世代のセフェム、特に注射薬は、ほぼセファゾリン(CEZ:セファメジン)と思っていただいていいでしょう。グラム陽性球菌と強毒性のグラム陰性桿菌がメインターゲット。


できた頃はペニシリンの過敏反応やペニシリナーゼによるペニシリン耐性が問題となっていたということでしょうか、過敏反応はペニシリンより少なく、構造上ペニシリナーゼに分解されない性質を持つ、という特徴があります。


そういうわけで、ペニシリナーゼを産生する菌に有効で、黄色ブドウ球菌(MSSA)、連鎖球菌(肺炎球菌を含む)、大腸菌、クレブシエラといったところを得意とします。


かつて、若い頃にとある病院で市中肺炎にCEZを頻用されていたのを覚えていますが…。今だったらどうでしょう。肺炎球菌、クレブシエラに効くので、ある程度は使えるか…いやいや、大事なインフルエンザ菌、モラクセラと嫌気性菌がごっそり抜けていますね。


となると、気軽に肺炎に対して使えるって感じではなさそうですし、他の感染症に対しても、これでOK、とはなかなかいかないようです。



現在よく使われる場面は、黄色ブドウ球菌(MSSA)と素直な大腸菌対策。というかこれだけ、みたいな感じになってきていますね。


具体的には、

  • 皮膚・軟部組織感染症(MSSAに対して)

  • 市中/急性/単純性尿路感染症(大腸菌に対して)

  • 術前予防投与(下部消化管、骨盤内、口腔咽頭部は嫌気性菌の関与が考えられるので難あり)



かつては術後に「感染予防」の名目でダラダラ使われていましたが、エビデンスがないことで今では術前にごく短期間使用されるようになっています。



使える場面が少ないというのはしかし、逆に考えるとメリットもあるわけです。


狭域抗菌薬のメリット、つまり余計な菌を殺さない、影響を与えないというのは、特にCEZの場合、腸内細菌(嫌気性菌)に有効ではない・影響を与えない=下痢しない、というメリットにもつながります。もちろん、余計なスペクトラムがないので耐性菌を作りにくい、というのも大いなるメリットですね。

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posted by 長尾大志 at 17:29 | Comment(2) | 肺炎ガイドライン解説
この記事へのコメント
お世話になっております。書籍版も購入させて頂き、SGTで大活躍でした。

セファメジンについて質問があります。書籍版でも「グラム陽性球菌と強毒性のグラム陽性桿菌がメインターゲット」となっていたのですが、後者は「強毒性のグラム陰性桿菌」ではないのですか? 強毒性のグラム陽性桿菌となると、炭疽菌とかということでしょうか? 知識不足もあり混乱しておりますので、何卒ご回答頂けると幸いです。

よろしくお願い致します。
Posted by とある医学部5年生 at 2014年05月14日 20:46
ご指摘、ありがとうございます。ご指摘通りで、大腸菌などの強毒性グラム陰性桿菌です。記事を訂正させて頂きました。書籍も訂正をお願い申し上げます。
皆様方のご指摘が、より正確な記事の源であります。これからも気づかれたことをお教え頂けましたら幸いです。
Posted by 長尾 大志 at 2014年05月15日 18:51
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