2012年10月10日

今日の症例・Parkinson病、COPDのある患者さんの急な悪化3・血液ガスの解釈

一昨日の症例、血液ガスの推移を解釈していきましょう。


血液ガスの解釈の仕方はこちらで解説しています。一番下からお読みください。



大まかな流れとしては、

@pHを見て、酸性(アシデミア)かアルカリ性(アルカレミア)かを確認する。
pHの正常値は7.350〜7.450です。


A次にPaCO2とHCO3-を見て、呼吸性(PaCO2が動く)か代謝性(HCO3-が動く)、どちらがpHの異常行動に寄与しているかを考える。

PaCO2の正常値は35〜45 増えていれば酸性へ 減っていればアルカリへ
HCO3-の正常値は22〜26 増えていればアルカリへ 減っていれば酸性へ


酸性へ持って行く力(方向)をアシドーシス、アルカリ性に持っていく力をアルカローシスと言います。


BPaCO2とHCO3-どちらかがpHを異常にしていれば、もう一方が戻そうとしている(代償)はずで、それを確認する。

*呼吸性のpH異常を代謝性に代償するには時間がかかります。代償し切れていなければ「急性呼吸性」。
*代謝性アシドーシスの時は、アニオン・ギャップ(AG)を評価します。


CPaCO2の動きとPaO2の動きがリンクしているかどうかを見ますと、肺の障害があるのかどうかが推定できます。


こういう流れであります。



それでは、症例の解釈をしてみましょう。まずは救急来院時。

pH   PaCO2 PaO2 HCO3- BE
7.235  78.5  28.2  32.1  2.6


@pHは7.235と酸性。つまりアシデミアですね。


APaCO2は78.5と高値。PaCO2は高い方がアシドーシス、すなわち酸性に動かす力となりますので、呼吸性に酸性へと移動していることがわかります。


B逆にHCO3-は32.1と高値。HCO3-が増えていればアルカリへの力となるので、呼吸性アシドーシスを代謝性に戻そうとしている(代償)ことがわかります。


CPaO2は極端に低い。呼吸不全状態です。


病歴からは比較的急速に症状が出ている。でもHCO3-はある程度代償している(でもし切れていない)。これをどう考えるか。


元々は慢性呼吸不全があって、それをHCO3-が代償して釣り合っていた(pHが正常であった)ところに、急性増悪があり呼吸性アシドーシスが急に進行、代謝性の代償が追いつかずにその結果アシデミアとなった、こういう解釈ができますね。



次に、ベンチュリーマスクでFiO2を50%にすると、どうなったか。

pH   PaCO2 PaO2 HCO3- BE
7.190  90.0  91.8  33.1  2.5


@pHは7.190と、アシデミアが強くなっています。よろしくないですね。


APaCO2が90.0と上昇。なぜか。CPaO2が91.8と改善したことで、呼吸中枢が「ホッ」としてしまったために呼吸数が減ったのでしょう(ここで、身体所見の「呼吸数」が効いてきますね)。CO2ナルコーシスです。


BHCO3-はがんばり続けていますが、代償は間に合っていません。



ということで、担当医はFiO2を40%に下げて、ナルコーシスの解除を試みたわけです。

pH   PaCO2 PaO2 HCO3- BE
7.223  76.2  88.4  30.7  1.0


@pHは7.223と若干改善。APaCO2も少し低下傾向ですが、まだしんどい。

ということで、鼻マスクによる人工呼吸を導入されました。


これ(黄矢印)はその蛇腹ですね。


120905CRjabar.JPG


導入後はどうなったでしょうか。

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