2012年10月12日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」21〜抗菌薬の種類と特徴11・マクロライド系抗菌薬1

それでは抗菌薬のお話に戻りましょう。


まあ、ペニシリンとセフェムが終わったら、終わったようなもんですが。というのも、ここからは割とお話がシンプルなので、長々とは続かなくていい(ハズ)なのですね。


マクロライド系。日本では不適切に濫用されていて、菌の耐性化がじゃんじゃん進んでいるのが問題です。以上。





というわけにもいかないので、もう少し歴史を紐解いてみましょう。


そもそもマクロライドは、βラクタム系(細胞壁合成阻害薬)と異なり、細菌の蛋白合成を直接阻害するという機序で働きます。そのため、細胞壁を持たないマイコプラズマや、細胞内寄生菌であるクラミドフィラやレジオネラなど、βラクタム系が無効な微生物に対して効果がある。これが特徴です。


また、元々のスペクトラムがグラム陽性球菌と、一部のグラム陰性桿菌ということで、肺炎をはじめとする気道系感染の原因菌を広くカバーするのです。


そして(実はこれがキモなのですが)、安全性が高い。小児に使っても安全。これはつまり、「何も考えずに使える」ということにつながります。



これまでにも繰り返して強調してきましたが、「何も考えずに使える抗菌薬は、ずぼらに使われて、耐性菌を生み、使い物にならなくなる」流れがあります。マクロライド系はまさにその流れに乗った形で、どんどん耐性化が進み、使えなくなっていったんですね。私の世代あたりの方々は印象深いのではないでしょうか。


具体的には、小児にバンバン使われたのが痛かったようですね。「子供が熱を出している」事象に対して、「とりあえず」処方する抗菌薬として、何となく効きそうで安全そうなマクロライド系を「何となく」処方していた、ということでしょう。


何てったって子供たちの間では菌は移動し放題(苦笑)。耐性がつけばその菌は広がり放題。ということで、小児の中耳炎や副鼻腔炎の原因菌であり、そのあたりに常在すらしている肺炎球菌に対しては、9割方マクロライドが効かないという悲惨な状況になりました。



肺炎球菌に効かない肺炎の薬なんて…クリープを入れないコーヒーみたいなもんで(このたとえも私の世代向け?)、今や使われる機会が激減…と思いきや、結構使われていたりします。日本は世界で一番使ってるとか。それが、最初に書いた「βラクタム系が無効な微生物(=非定型病原体)」。それと、気道系の分泌がなんちゃら。そして、「何となく」。



特に若い世代の人々に多い、比較的軽症の肺炎、これはマイコプラズマが多い。マイコプラズマに対してはマクロライド単剤でもいいでしょう。とはいえ、耐性マイコプラズマが問題、とキノロンメーカーさんが煽ってきていて、専門家の先生方でもおっしゃることは色々です。


まあ個人的には、キノロンを温存したい派ですので、マイコっぽい軽症肺炎だったらマクロライドでいいんじゃないか、とは思っていますが。


ただ、もうそろそろ、「何となく抗菌薬を出さないと不安だから」マクロライドを処方するのは、やめにしましょう。ホンマモンの肺炎球菌感染だったらまず効かないし、上気道炎みたいに使わなくたって良くなるものも多いわけで。きちんと頭を使って診断をし、原因菌を考えて薬剤を選択したいものです。


気道系の分泌云々に関しては日を改めます。


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posted by 長尾大志 at 17:18 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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