これの根拠は、びまん性汎細気管支炎(Diffuse panbronchiolitis:DPB)だと思われるのですが、この疾患は線毛機能が低下することで発症する副鼻腔炎+びまん性の細気管支炎です。
DPB発症の機序を理解する。
このDPB、かつては治療法もなく、平均予後2年とも言われた「難病」でありましたが、エリスロマイシン少量長期療法によって、感嘆、いや「簡単に治る」疾患となったのです。イヤもう当時は感嘆の嵐…。
未だにこの作用機序がすべて明白になった、とは言い難いところでありますが、少なくともエリスロマイシンの抗菌作用以外の「気道分泌を整える作用」が大いに功を奏していることは確か。
そこから、気道分泌の問題にはエリスロマイシンが頻用されるようになってきました。副鼻腔炎にエリスロマイシン、気管支拡張症にエリスロマイシン、気管支炎にエリスロマイシン…そして、痰が多ければエリスロマイシン。
残念ながら、DPB以外のこうした使い方にはエビデンスも根拠もなく、昨今では批判の多いところであります。まあ、他に薬がないから、仕方なく使っている面もあり、痛し痒し、でもあったりするのですが。
そこへさらに新しいクラリスロマイシンなどのニューマクロライドがスペクトラムの拡大と副作用の低減を謳って登場したわけです。
使いやすく、肺炎球菌などにも効果があるクラリスロマイシンは、「何も考えずに使える」抗菌薬として、瞬く間に市場を席捲したのでありました。
最初はエリスロマイシンが効かなくなってきたDPBに対して、次第に副鼻腔炎にクラリスロマイシン、気管支拡張症にクラリスロマイシン、気管支炎にクラリスロマイシン…そして、痰が多ければクラリスロマイシン。
今でも某科では、副鼻腔炎にダラダラクラリスロマイシン(略してダラシン、ではありません)、をよく見かけます。
というわけで、細菌感染に対する翼をもがれてしまったクラリスロマイシン(CAM)。今更、という感は否めませんが、呼吸器領域での適正な使用法を考えてみましょう。
- 非定型肺炎:主にマイコプラズマだと思いますが、以前にも書いたように若い人の軽症肺炎だったら、CAM単剤でも良さそうです。
- 百日咳:こちらを活動期に使用できるタイミングは難しいでしょうが、周りで流行っていれば自信を持って使いましょう。
- 非定型(非結核性)抗酸菌:最近は非結核性、といわれますが、昔の名前で非定型。要するに、非定型にはCAMってことでよろしいでしょうか。
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