2012年10月17日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」23〜抗菌薬の種類と特徴13・カルバペネム系抗菌薬1・カルバペネム系を「使うべき」場面

やってきました、カルバペネム系。ひょっとしたら、これをご覧の方の中にも、「ウチの病院では、肺炎にはまずカルバペネムを使っています。」という方もおられるかもしれません…残念!


ややこしいことを言い出せばきりがありませんが、カルバペネム系は最終兵器であって(最強兵器とは限りませんが…)、大事に使っていただきたい、ということは何度でも言っていきましょう。こいつらの次(の抗菌薬)はありません。


そういうわけで、まともな病院!?であれば、カルバペネム系などには登録制のような、何らかの使用制限がかかっていることが多いはずです。
まあ、本当にまともな病院であれば、使用制限しなくても滅多に使われないはずですけど



カルバペネム系については「ほぼ万能である」と言っておけば、大体間違いではないので、それで済ませてもいいのですが、いくつか是非知っておいて頂きたいことを書いておきます。あと、以前に述べたゾシンについても、ほぼ同じことですので同様に考えていただければと思います。



■カルバペネム系を「使うべき」場面

呼吸器領域、すなわち肺炎治療においてカルバペネム系を使うべき場面は、それほど多くはないはずです。


基本、これまで書いてきたとおり、抗菌薬は「これしか効かない」「これでなくてはならない」選択をすべきであって、「これだったら頭を使わずになんでも効くよ」という選択はすべきではありません。


抗菌薬選択戦略.jpg


赤い星には1の抗菌薬を使うべきで、4を使うべきではない。4を使うのは緑の星に対してのみ。この原則です。


しかしながら、「今日これからいく治療が万一失敗したら、この患者さんの命にかかわる」という場面では、赤い星から緑の星まで、あらゆる病原体に効く抗菌薬を(上の図なら4を)使うべきであり、そこで出し惜しみしてはいけません。ここは、勘違いしないようにしましょう。


要するにICUに入室されるような重症肺炎。この場合、レジオネラなどの非定型菌や耐性緑膿菌などを想定し、他剤との多剤併用でいくことになります。


あとは、良質な喀痰から緑膿菌が培養されたときのように、原因菌として緑膿菌が想定される場合、これも使ってよろしい。


日本のガイドラインであれば、軽症であっても、院内肺炎で下のリスク因子を満たす場合にはカルバペネム系の使用を考慮、としてあります。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。



この場合、使う「べき」とは申しませんが。



で、ここからが大事なのですが、こういう広域抗菌薬を開始する前には、必ず「ありとあらゆる培養」を採るようにしましょう。文字通りのあらゆるもんです。


そして、その結果、緑膿菌の可能性が低い、となったらde-escalationのチャンス、という感じで進めていくのです。

…と前にも書きましたが、de-escalationについても近々説明をしなくてはなりませんね〜


肺炎ガイドラインを最初から読む

トップページへ

posted by 長尾大志 at 17:56 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。