やってきました、キノロン系。
ここで最も言いたいことは、「日常臨床でできる限りキノロン系を使わないように努めることで、抗菌薬使用に関するセンスが磨かれる」ということです、以上。
…というわけにもいかないので、もう少し歴史を紐解いてみましょう。
そもそもキノロン系は他の多くの抗菌薬と異なり、人間によって合成された化合物です。
キノロン系ができた頃の初期のキノロン(オールドキノロン)は、グラム陰性桿菌(と非定型病原体)にしか効果が期待できませんでしたが、その後着々と改良が進んできました。
そうしてできたキノロンは(オールドに対して)ニューキノロンと名付けられました。ニューキノロンになりますと、グラム陽性球菌にもスペクトラムが広がり、組織移行も良くなって、どんどん使用される場面が増えてきました。
そして近年、さらに改良が加えられたキノロンは、それまで弱点であった肺炎球菌への活性が高められて、肺炎など、気道感染症に(自信を持って)使えるようになりました。結果、「レスピラトリーキノロン」と銘打たれ、頻用されるに至っています。
確かに、肺炎球菌に強く、インフルエンザ菌にも( BLNAR にも!)効いて、非定型病原体もカバーする、何だったら緑膿菌にまでスペクトラムを有する、ということになりますと、もう肺炎の原因菌だったら何でも来い状態の、便利な、便利な抗菌薬。
それゆえ、かつてのマクロライドのように頻用されています。現実に、不適切な濫用でニューキノロン耐性肺炎球菌や、ニューキノロン耐性緑膿菌が報告されていて、今後の蔓延が心配されています。
実際には、キノロンでなくてはならない場面というのはほとんど無くて、呼吸器領域では
レジオネラ肺炎(キノロン静注用を使います)
ぐらいなのですね。
ウチのカンファレンスで「ク○ビットの点滴を使ってる」と発言して「レジオネラ肺炎だと思ったの?」と訳のわからないことを言われた方、そういうことなのです。
まあもちろん、副作用で他剤が使えない…、とか、耐性が…、とか、移行が…、とか、色々な理由で使わざるを得ないことはありますが、その場合にも、「根拠を明示する」習慣をつけて、根拠無く何となく使う、ということを避けて頂くのがいいと思います。
とっても素晴らしく、大事な薬ですので、できるだけ出し惜しみしましょう。
肺炎ガイドラインを最初から読む
2012年10月22日
肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」26〜抗菌薬の種類と特徴16・キノロン系抗菌薬・キノロン系を「使うべき」場面
posted by 長尾大志 at 18:25
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| 肺炎ガイドライン解説
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