「キノロンは何にでも効く」「何にでも使っていいや」と思っていると、時々足下を掬われることがあります。まあ、掬われたご本人は掬われたことにも気づかれないことが多いのですが…。是非知っておきたいポイントをまとめました。
■嫌気性菌にはあまり効力がない。
元々グラム陽性球菌には決して強くありません。レスピラトリーキノロンといっても、肺炎球菌に対する抗菌力を強化しているだけで、嫌気性菌はカバーし切れていません。そういうわけで、誤嚥にご縁のありそうな肺炎には、実は不向きです。肺炎だったら何でもいいわけではありません。
■経口薬で唯一、緑膿菌にスペクトラムがある。
これはまあ、どちらかというといい点なんですが…。
緑膿菌に限らず、経口薬でこれだけ広域のスペクトラムを持ち、組織移行もいい薬はありません。故に、緑膿菌感染症であっても外来である程度「粘れる」というところはあるでしょう。しかしながらその分、濫用されてしまうわけです。
■結核や非結核性抗酸菌に対しても有効である。
中途半端に?効いてしまうが故の問題点があります。
例えば、肺炎様の陰影があって、キノロン投与して何となく良くなったものの、治りきらない。やめたらまた悪化してきて、そこではじめて喀痰検査→肺結核と判明、という流れ。
時々見かけます。初診から診断までに2週間以上。doctor’s delayのため周囲に感染が広がり、下手をするとキノロン耐性になっていたりして。
単剤投与は耐性結核を生み出します。
肺炎にキノロンを使う前には、結核が除外されているか、検討が必要です。ていうか、こういうこともあるので、肺炎にキノロン系を闇雲に使うのは本当にオススメしません。
■マグネシウム、アルミニウムの含まれている薬剤と同時に内服するとキレートを形成し、吸収が悪くなる。
これは常識でしょうが、頻用されているが故に注意喚起しておきます。効くはずが効いていない、というときには色々な要素を考える必要がありますが、「何らかの理由で想定通りの血中濃度、組織濃度になっていない可能性」もその一つです。
また、キノロン系は(NSAIDsとの併用での)痙攣、めまい、光線過敏、QT延長、、血糖異常、横紋筋融解やアキレス腱断裂など独特の副作用があり多くの薬剤が使われなくなっていった経緯があります。今頻用されているキノロン系抗菌薬たちはそういった副作用が少なく「何も考えずに」使いやすいモノですが、それでも注意すべき、とされていることは知っておきましょう。
肺炎ガイドラインを最初から読む
2012年10月23日
肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」27〜抗菌薬の種類と特徴17・キノロン系抗菌薬2・キノロン系で知っておくべきこと
posted by 長尾大志 at 18:55
| Comment(0)
| 肺炎ガイドライン解説
この記事へのコメント
コメントを書く