ダラダラゾシン、とか、ダラダラクラリスロマイシン、とか、あまりいい意味で語られてこなかったダラシンですが(勝手にお前が変な書き方をしただけだろ、という声もなく)、実は大変使えるお薬です。
ただし、誤嚥にダラシン、みたいな感じで何となく使われることが多いことも確か。もう少し知っておかれると良いことをまとめたいと思います。
リンコマイシン系の抗菌薬は、クリンダマイシン(CLDM:ダラシン)だけ知っておかれれば大丈夫でしょう。CLDMのスペクトラムはグラム陽性球菌と嫌気性菌です。ペニシリンに似ていますね。このスペクトラムから、誤嚥にご縁のある肺炎にはダラシン、とされてきたのです。
ガイドラインでも、広域抗菌薬を投与する場面で嫌気性菌のスペクトラムがあやしい第3世代〜第4世代セフェムやキノロン系抗菌薬を選択した場合、嫌気性菌(とグラム陽性球菌)をカバーする目的で追加されていますね。
基本的には殺菌性作用ではなく、静菌性作用があるということですが、それで効力が殺菌性抗菌薬より劣るということはなさそうです。通常の免疫力のある患者さんには普通に使って大丈夫でしょう。
メリットとして、CLDMは肝代謝であるため、腎機能障害があっても基本的に量を調節する必要がない、ということが挙げられます。また、ペニシリンなどにアレルギーがあってもこちらは大丈夫なので、そういうときの代替薬としても重宝します。
CLDMといえば、偽膜性腸炎が有名です。CLDMに限らず、腸内細菌(嫌気性菌も多い)の多くが死滅してClostridium difficileが生き残る菌交代減少の結果発症します。CLDMに限らず、抗菌薬治療後の下痢、血便等を見たら偽膜性腸炎を疑う必要があります。
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2012年10月25日
肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」29〜抗菌薬の種類と特徴19・リンコマイシン系
posted by 長尾大志 at 12:37
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| 肺炎ガイドライン解説
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