2012年10月26日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」30〜肺炎治療の流れ1

「もうお腹いっぱい」「いい加減にしろ!」「UZA!」との声もなく、長々と抗菌薬のお話を続けて参りましたが、そろそろよろしいでしょう。


どういう文脈であったか、自分でも忘れかけていますが、これ、肺炎の治療を考えていたのですね。多くの方はもうお忘れでしょうから、少しおさらいをしておきましょう。




肺炎の診断、治療を考える上で大切なことは、

如何に適切な抗菌薬を使うか

に尽きると思います。


原因となる菌に対して、できる限りのピンポイント攻撃をしたい。絨毯爆撃でも原因菌は死に絶え、患者さんは良くなるでしょうが、必ず爆撃の後の焼け野原に耐性菌が生えてきて、後顧の憂いとなるわけで、人類全体の将来を考えるならば、できる限り爆撃機は来るべき「背水の陣、総力戦」に備えて温存しておきたいところです。


書いていて、皆さんが文脈についてきておられるか不安になってきました。何言ってるかよくわからん、という方は、この記事(3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」)をできれば1からお読みください。



適切な抗菌薬を選択するためには、原因菌が何であるかを見定める必要があります。見定めるために必要なポイントは、


  • 肺(など)から菌を検出する。

  • 菌が検出されなければ、状況証拠から類推する。



これしかありません。


まずは、菌を検出する努力をしましょう。生半可な努力では検出できません。具体的には、


  • 良質な(唾液ではない)喀痰を採取する。痰が採れたらちゃんとした良質の痰であるか肉眼で確認しましょう。

  • 痰の喀出が困難な場合、3%食塩水などを吸入の後排痰を試みる。

  • 気管支鏡、局所の穿刺などを試みる(特に嫌気性菌が疑われる場合は、喀痰からの検出は空気に触れるために困難です)。

  • 血液培養を採取する(複数箇所で、複数回)。

  • 尿、便、膿瘍など、採れそうなところのモノはすべて採る。



これらは意識をしておかないとなかなかできることではありませんが、判断材料は多ければ多いほどいい。「尿なんて、関係ないところのモノを採っても、判断に迷うだけじゃないの?」いえいえそうではなくて、それを判断するスキルを身につけるのが研修なのです。


奇しくも今朝の教育カンファレンスで言ったことなのですが、物的証拠がないところでの判断はバクチの要素が大きくなります(もちろん、その要素を最小にするべく、状況証拠を積み重ねていくわけですが)。


事件があったときに犯人を推定するにあたって、物的証拠は何よりの手がかりとなるはず。それの蒐集をせずして、犯人捜しをするのはちょっと違うんじゃないの?と、ドラマを見ていると思いますよね。じゃあ、臨床の場でもそうしましょう。


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posted by 長尾大志 at 16:51 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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