2012年10月29日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」31〜肺炎治療の流れ2・検体を採ったら、グラム染色の結果を解釈

そういうわけで、良い検体(喀痰)を採ったら、グラム染色をしましょう。


グラム染色の具体的な手順や、どんなんが見えたらどう解釈、などは写真も豊富な成書をご覧頂きたいのですが、グラム染色から原因菌を想定し治療薬に反映させる、基本的な考え方みたいなところを書いておきます。



1.グラム陽性の双球菌が見えたら

これはもう、肺炎球菌でいいでしょう。初心者のうちは、それさえわかればグラム染色をやった価値は充分ありますね。


市中肺炎患者さんの喀痰から肺炎球菌を見つけたら、自信を持ってペニシリンを使いましょう。ただし、何度も書いていますが、量は目一杯です。



2.グラム陽性球菌が集塊状に見えたら

ブドウ球菌を連想します。ここで大切なことは、「だから、ブドウ球菌肺炎である」と思わないこと。良質な喀痰であること、そして貪食像があるかどうかの評価が必要です。


貪食像があってMRSAの存在を疑わせる臨床状況があれば、MRSAもカバーする必要が出てくるかもしれませんが、貪食像がなければ保菌かと考えていける、という感じです。



3.グラム陰性桿菌が見えたら

緑膿菌かどうかが問題になってきます。技師さんや慣れた先生に見てもらいましょう。良質な痰から得られた緑膿菌は、きわめて重要な意味を持ちます。必ず培養し、感受性検査を行いましょう。


インフルエンザ菌の場合にも、耐性パターンによって治療薬が異なりますから、施設や周囲での菌の状況を知っておく必要があるでしょう。


ちなみにインフルエンザ菌、耐性パターンによる抗菌薬の選択は、

  • BLNAS :ABPC

  • BLNAR:第3世代セフェム

  • BLPAR:βラクタマーゼ阻害剤+ABPC配合剤


となりましょう。



4.多様な菌が見えたら

嫌気性菌の可能性が想定されます。誤嚥の要素を確認する必要がありますね。



5.菌が見えなかったら

色々な可能性がありますが、臨床状況から(マイコプラズマをはじめとする)非定型病原体が想定されるのであるならば、合致する所見と言えます。また、肺炎以外の疾患である可能性も想定する必要があるでしょう。


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posted by 長尾大志 at 18:16 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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