2012年10月31日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」33〜肺炎治療の流れ4・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方2・細菌性肺炎疑い例に対する入院治療

■市中肺炎・細菌性肺炎疑い例の入院治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。

  • 1.基礎疾患、がない、あるいは若年性人の場合:βラクタマーゼ阻害剤配合ペニシリン注射薬、PIPC(高用量)

  • 2.65歳以上あるいは軽症の基礎疾患(糖尿病、腎疾患、肝疾患、心疾患)がある場合:1に加えセフェム系注射薬

  • 3.慢性の呼吸器疾患がある場合:1,2に加えカルバペネム系薬、ニューキノロン系注射薬




細菌性肺炎疑い例の場合、PISPあたりまでを含む肺炎球菌が、まずはメインターゲットでした。


他に、喫煙者、COPD患者さんのように、線毛機能が低下していそうな方では(地域によって、BLNARまでを含む)インフルエンザ菌とモラクセラ、大酒家ではクレブシエラ、誤嚥にご縁がありそうな方は嫌気性菌、このあたりの菌を想定しておきます。


入院患者さんの場合、翌日には呼吸数が減って、ラ音が改善して…と効果判定ができるので、スペクトラムを狭域に設定できます。治療がうまくいかなくても早期の修正が可能なのです。


その代わり、入院ですから注射薬を目一杯使います。


基礎疾患がなければペニシリン大量でよろしいかと思いますが、BLNARやクレブシエラを考えるとABPCでは心許ない、となります。とはいえ、今時PIPCでもないと思います。緑膿菌に下手に届いてしまうので、PIPCは避けた方が良いでしょう。


高齢、基礎疾患ありなどとなってきますと、BLNARやクレブシエラをより想定することになるため、セフェムを選択肢に入れるべきでしょうが、続いての項目、慢性の呼吸器疾患がある、最近抗菌薬を使用したという患者さんの場合にカルバペネムやキノロンが必要か…となると、どうでしょうか。


もちろん、1,2に加えて、ということですから、1,2でもよろしいわけです。このあたりが主治医の裁量、ということになるでしょう。



こう見ていくとおわかり頂けるように、ガイドラインにおけるエンピリック治療は、どうしても広域に向きがちになります。それはガイドラインという(万人に無難に、という)性格上やむを得ないところでありまして、だからこそ逆に、できる限り物的証拠を得る努力をして、狭域ですむよう心がけたいものですね。


肺炎ガイドラインを最初から読む

トップページへ

posted by 長尾大志 at 18:01 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。