2012年11月01日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」34〜肺炎治療の流れ5・市中肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方3・ICU治療・重症肺炎例に対する治療

■市中肺炎・ICU治療・重症肺炎例に対する治療の場合

ガイドラインには以下のごとき「治療の目安」が載っています。


1群

  • カルバペネム系注射薬

  • 第3、4世代セフェム系注射薬+CLDM

  • モノバクタム+CLDM

  • グリコペプチド系+アミノ配糖体系



2群

  • ニューキノロン系注射薬

  • テトラサイクリン系注射薬

  • マクロライド系注射薬



1群、2群から薬剤を選択し、併用する。




ICUに入室する、そこまでではなくても大変な重症の肺炎治療は「待ったなし」であり、治療失敗は許されません。そのため、エンピリック治療の段階から広域抗菌薬使用が許容される、ということになっています。


そうはいっても、何でもかんでも併用すればいいということではなく、市中にいそうな病原体がターゲットであることは間違いありません。


市中肺炎における原因微生物を頻度順に並べると、大体こんな感じになります。

肺炎球菌
インフルエンザ菌
マイコプラズマ
クラミドフィラ
レジオネラ
黄色ブドウ球菌
モラクセラ
クレブシエラ
ミレリ・グループ
嫌気性菌


嫌気性菌の頻度が低いのは、検出された数の統計であるためで、(空気に触れてしまう)喀痰ではなかなか検出されない嫌気性菌には不利な統計です。近年は特に高齢化などにより、誤嚥、嫌気性菌の関与が疑われる症例は多くなっていそうですね。


こうやって見渡すと、肺炎球菌(PISP〜PRSP含む)、インフルエンザ菌(BLNAR含む)、嫌気性菌、βラクタマーゼを産生するその他の菌たちに非定型病原体を含めた広いスペクトラムの抗菌薬が必要である、ということが理解できます。


ただ、市中で緑膿菌感染は少ない。(多剤)耐性緑膿菌ともなると、よほど事情がある方以外はあまりないんじゃないか、ということで、緑膿菌をターゲットにした2剤併用は不要と考えられています。


一方、市中肺炎で重症肺炎となったときに、カバーしておく必要があるのはなんといってもレジオネラですから、そちらのカバーは必須なわけです。そういう意味では、2群からのチョイスはキノロンが好ましいか、と思います。


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posted by 長尾大志 at 17:43 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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