2012年11月02日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」35〜肺炎治療の流れ6・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方1・軽症群に対する初期治療

菌をもらった場所別の原因菌・入院している患者さん=院内肺炎で考察したように、院内肺炎、特に病院に長居されている、あるいはリスクの大きな(免疫低下のある)患者さんの肺炎ともなりますと、原因菌は腸内細菌をはじめとするグラム陰性桿菌・MRSAが主体です。


原因菌探しのために検体、グラム染色、培養を採取しておくことはきわめて重要であり、検体を採ったら、グラム染色の結果を解釈して抗菌薬を選択しますが、実際問題必ずしも良質な検体(特に痰は)を得られるわけではありません。そのように物的証拠なしに治療を開始せざるを得ない場面では、状況証拠から犯人を絞っていくことになります。これがエンピリック(経験的)治療ということになります。


院内肺炎のエンピリック治療に関して重要なことは、耐性菌であるところの緑膿菌、あるいはMRSAが原因に関与しているかどうかでしょう。このあたりが関与していると想定される、あるいは、重症の場合はそこまでカバーする抗菌薬をエンピリック治療において使用すべきであります。



そこを理解すれば、後はガイドラインを眺めるだけ。重症度を判断したら、エンピリック治療の選択を行いましょう。



■軽症群(A群)に対する治療

  • セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン)

  • スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC:ユナシンS)

  • パニペネム・ベタミプロン(PAPM/BP:カルベニン)



軽症群に対する治療では基本的に緑膿菌、MRSAを外した選択肢となりますが、それでもグラム陽性球菌〜陰性桿菌に対し広いスペクトラムを持つ抗菌薬が挙げられています。


補足として、再三書いてきたように、誤嚥にご縁のありそうなケースではCTRXを避ける、ということと、PAPM/BPは抗緑膿菌活性が中途半端にあり、IPM/CSとの交差耐性も知られていることから、緑膿菌のいるところで使うと、「効かない上に他のペネムに対する耐性がつく」ということは知っておきましょう。



さらに、軽症群であっても、緑膿菌がいそうであれば中等症群(後述)に対する抗菌薬を選択することを考慮します。


日本の院内肺炎ガイドラインによりますと、以下のような項目が緑膿菌の存在を疑うリスク因子として挙げられています。


  • 15日以上入院している。

  • 第3世代セフェム系抗菌薬を使用したことがある。

  • COPDなどの慢性気道疾患がある。




また、MRSAの関与が疑われる場合には初期治療から抗MRSA薬を使用する方が予後の改善につながるのではないか、という若干奥歯に物がはさまったような言い方をされています。


具体的には、グラム染色でMRSA感染が疑われ、かつ

  • 長期(2週間程度)の抗菌薬投与。

  • 長期入院の既往。

  • これまでに鼻腔や痰などからMRSAが検出された。


のいずれかの項目に該当するケースです。


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posted by 長尾大志 at 18:43 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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