2012年11月06日

肺炎と抗菌薬〜3つのガイドラインの根底に流れる「共通の考え方」37〜肺炎治療の流れ8・院内肺炎に対するエンピリック治療の基本的考え方3・中等症群に対する治療

院内肺炎の中等症になりますと、当初から緑膿菌をカバーした選択になります。ただ、重症群(待ったなし)と違って耐性緑膿菌を最初から想定しておらず、基本単剤でのカバーとなります。




■中等症群(B群)に対する治療
グループ1.単剤投与

  • タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC:ゾシン)

  • イミペネム・シラスタチン(IPM/CS:チエナム)

  • メロペネム(MEPM:メロペン)


IPM/CS、MEPMの代替薬として、ドリペネム(DRPM:フィニバックス)、ビアペネム(BIPM:オメガシン)があります。


グループ1はTAZ/PIPC、あるいはペネム系という、MRSA以外にはほぼ万能といえるスペクトラムを持つ抗菌薬がチョイスされています。まあこれは特に申し上げることもないでしょう。



グループ2.条件*により併用投与
*条件:誤嚥か嫌気性菌の関与が疑われる場合

  • セフェピム(CFPM:マキシピーム)±

  • クリンダマイシン(CLDM:ダラシン)



誤嚥がなく、嫌気性菌をカバーする必要がなければ、CFPM単独でよいのですが、嫌気性菌には少し弱いため、必要時にはCLDMを追加する、というものです。


なお、第4世代セフェムであるセフピロム(CPR:ケイテン、ブロアクト)、セフォゾプラン(CZOP:ファーストシン)がCFPMの代替薬として挙がっています。



グループ3.原則併用投与

  • セフタジジム(CAZ:モダシン)+CLDM

  • シプロフロキサシン(CPFX:シプロキサン)+スルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC:ユナシンS)



何でも単剤では能がない、ということで、お互いの長所と短所を組み合わせた併用のご紹介です。


CAZはグラム陰性桿菌・緑膿菌に有効なのですが、グラム陽性菌・嫌気性菌に弱いので、そこをカバーするCLDMを組み合わせるとうまく広くカバーできるんですね。


CAZの代替薬として、似たスペクトラムの(玄人好み)アズトレオナム(AZT:アザクタム)、スルバクタム・セフォペラゾン(SBT/CPZ)が挙げられます。特にSBT/CPZは、CLDMと共に肝代謝される薬剤であり、腎機能障害時に使いやすいものです。



後者の組み合わせも渋いです。CPFXというキノロンをSBT/ABPCというペニシリンに組み合わせ、キノロンに緑膿菌と非定型病原体をカバーさせ、キノロンの弱いグラム陽性球菌と嫌気性菌にSBT/ABPCを当てているわけです。


当然、CPFXのところには当時なかったレボフロキサシン(LVFX:クラビット)が入ってもよく、パズフロキサシン(PZFX:パシル、パズクロス)も使えます。


また、先ほどと同じことで、SBT/ABPCの代わりにCLDMも使えます。


最後に、MRSAの関与が疑われる場合には初期治療から抗MRSA薬を使用する方が予後の改善につながるのではないか、というあたりのことは軽症群の治療のところでも書いたとおりです。


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posted by 長尾大志 at 18:14 | Comment(0) | 肺炎ガイドライン解説
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