2012年12月11日

今日の症例・褐色の痰5

Nocardiaみたいなグラム陽性桿菌…褐色痰…。ということでO澤先生に尋ねてみました。


(以下メールを引用)
ノカルジア肺炎は膿性痰を伴う浸潤影でもよいし、肉芽腫による結節影でもよいし、それらの混合でもよい、となっております。ノカルジアは細菌ではありますが菌糸が放射状に伸びるなどの特徴は真菌を思わせるところもあり、陰影(≒宿主と病原体の攻防)も細菌と真菌の間をうろうろしているのかもしれません。また、ノカルジアに罹患する方は免疫不全の方も多いので、陰影は宿主の免疫状態にも大きく左右されるのでしょう。討って出るのが得策(病原体を殺しきれる)と免疫が判断したのであれば浸潤 影を呈する、囲い込んで兵糧攻めにするのが得策(病原体を殺しきれない)と免疫が判断したのであれば肉芽腫性結節影を呈する、と考えております。


茶色の喀痰ですが、千葉大学の真菌センターのサイトを見ますと、ノカルジア・ファルシニカは茶色のコロニー、ノカルジア・アステロイデスは赤いコロニーとして掲載されています。コロニーの色は培地の組成で大きく左右されるとはいえ、ノカルジア・ファルシニカが培養されれば非常に有益な内視鏡所見であったと思われます。
(引用ここまで)


果たせるかな、気管洗浄液よりNocardia farcinica検出。時を同じくして、静脈血からも同じ菌が得られました。おおー。結構ゾクゾクしますね。


この結果を受け、ST合剤+IPM/CSで治療を開始し、良好な治療効果を得ました。痰の色にも色々な意味があるのですねー。


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posted by 長尾大志 at 18:14 | Comment(0) | 肺の防御機構と痰
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