12月15日に開かれる第80回日本呼吸器学会近畿地方会にて、「医学生・研修医アワード」セッション座長と審査員を務めることとなりました。例によって、予習にお付き合いいただきたいと思います。
勝手ながら自分が座長をするところから見て参ります。
■サバ寿司による窒息を契機に発症した陰圧性肺胞出血の1例
概要
ワーファリン内服中、食事中窒息し、吸引処置後胸部CTで両全肺野のびまん性網状影が見られた。気管挿管後の気管支鏡で両肺にびまん性の出血があり、上記診断となった。誤嚥による陰圧性肺水腫の報告が散見されており、陰圧性肺水腫から肺胞出血を来したと考えられる。
所感
陰圧性肺水腫の報告自体はそれほど多くないものの、今後超高齢化の進行に伴って誤嚥、窒息を契機とする陰圧性肺水腫は増加すると考えられる、というところの議論をどのように文献的に考察されるかが見どころです。
そもそも全身麻酔患者の抜管後、喉頭痙攣などに引き続いて観察された病態であり、今後どの程度増加すると見込まれるのか、窒息、誤嚥した患者さんでどの程度の割合で起こると見込まれるのかが論点でしょうか。
■前立腺癌に対する抗アンドロゲン療法により発症した薬剤性間質性肺炎の1例
概要
8ヶ月前に前立腺癌に対しビカルタミド内服およびリュープロレイン皮下注を開始された。1ヶ月前から乾性咳嗽が出現し、CTにて両側びまん性のすりガラス陰影を認め、BALFリンパ球増多、CD4/8上昇、BALFのDLSTでビカルタミド520%と陽性であり、同薬による薬剤性間質性肺炎と診断した。
所感
ビカルタミド使用中に間質性肺炎を来した症例で、BALFのDLSTで確定診断しえた症例ははじめてとのことです。なぜはじめてなのかという点の考察、今後同様の症例でもBALFでDLSTをすべきなのかに関しての指針などをお示しいただきたいところです。
また、抗アンドロゲン製剤としての反応の可能性もあるようで、今後の前立腺癌治療の方針についてはどうすればいいのかも教えていただきたいと思います。
■広範囲の肺野病変を認めた若年Mycobacterium kansasiiの一例
概要
小児喘息以外に基礎疾患のない33歳男性が著明な低栄養とやせを呈し、Mycobacterium kansasii症と診断された。INH、RFP、EB、CAM4剤で治療開始後高熱が持続した。
所感
Mycobacterium kansasii症は肺に基礎疾患がある例が40%程度あり、胸部レントゲン写真で正常でも粉塵吸入歴や重喫煙歴があったりすることがあるようです。本症例ではやはり「なぜ」発病したかの機序をどこまで考察できるかがポイントかと思います。
また、関連しますが、栄養状態の改善はどこまで可能であったか、つまり当初の状態がどこまで可逆的であったのか、そういうところを文献的考察と絡めていただけるといいんじゃないでしょうか。
今度、基礎分野の学会ですが、学生セッションで発表をしますので、非常に参考になりました。
基礎の学会とはちょっと違うかも…。まあ考察次第ってところもありますかねー。